患者さん向けの解説

膵のう胞・IPMNがありますと医師に言われたら【患者さん向けの解説】

投稿日:2020年9月21日 更新日:

医師「膵のう胞・IPMN」がありますね!

そのように医師にいわれた方のためにかきました。

まず、膵臓になにかある、影があるなどといわれた時点で、あなたや家族の動揺は大きいと思います。

「IPMNです」日本語でいうと「膵管内乳頭粘液性腫瘍です」とかいわれてもわかんないですよね、、、

 

この動揺をおちつかせるために必要なことは、
まず相手を十分に知ることです。

しゅん
しゅん
わかりやすく解説していきます!

膵のう胞(すいのうほう)って何?

すい臓とは胃の裏あたりやや下にある臓器で、
主な役割は血糖の調節や、消化です。

すい臓の中には膵管といって膵液を流す管が通っています。
血糖調節はすい臓とつながっている栄養血管から直接行われます。

 

膵のう胞とは、
膵ぞうの中にできる、袋(ふくろ)です。
この袋の中に膵液や、ねとねとの粘液、さらさらの液体である漿液(しょうえき)がたまっているのです。

膵のう胞の種類は?

膵のう胞という袋にたまった液体の種類や形によりのう胞には様々な種類があります。

代表的なのう胞には、

膵のう胞の分類(代表的なもの)
①単純のう胞:5mm以下ののう胞

膵管内乳頭粘液性腫瘍であるIPMN:多房性、ぶどうの房状、膵管と交通がある。粘液を産生する微小な腫瘍が
③しょう液性のう胞腫瘍であるSCN:小のう胞が集まっているような構造をとることが多い。
④粘液性のう胞腫瘍であるMCN:
⑤貯留嚢胞:膵管が蛋白栓や結石、腫瘍でつまり膵液がたまってできたのう胞

この中で検診のエコーやCTなどで所見がつくのは、

膵のう胞やIPMNでしょう。

検診の結果に、
「膵のう胞」と、特にのう胞の種類を限定せずざっくりかかれることもありますし、
形がぶどうの房ように多房性であれば、「IPMN」とかかれることもあるでしょう。

今回はとくにIPMNとかかれた方のために解説していきます。

IPMN:膵管内乳頭粘液性腫瘍

これは名前のごとく、

膵管内に、乳頭状(ポリープのような形)に発育する腫瘍で、
腫瘍から産生される粘液により膵管が拡張することから(これがふくろに見えます)、

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と呼ばれています。

 

多くのIPMNでは粘液でふくらんだ袋のみが見えることが多く、
粘液を産生する腫瘍自体はみえないことが多いです。

 

IPMNの予後は?

基本的には良性腫瘍で予後は良好であると言われています。
がんになるまで10年かかるという報告もあります。

 

のう胞の中に腫瘍がない場合は、基本的には良性なので経過観察可能です。

 

一方、のう胞の中に腫瘍がある場合は悪性の可能性があり、
放置するとがん化することがあるので治療を検討する
必要があります。

重要なポイントは、
膵のう胞のなかに
腫瘍があるかどうか
を見ることです。

 

どうやってIPMNのなかの腫瘍を発見するのか?

エコーや造影CT、MRI、EUS(超音波内視鏡)などの検査を行うことで
嚢胞内に腫瘍が疑われるような結節がみえることがあります。

結節がある場合は、治療するかどうかを検討していくことになります。

 

 

 

しかし、この結節、粘液塊という粘液の塊のこともあり、
結節があるからといって、かならずしも腫瘍ではないこともあります。

よって、のう胞の中に結節がある場合は粘液の塊か、腫瘍なのかを区別する必要がありますが

粘液塊か腫瘍かの区別はエコーCTやMRIではなかなか難しく、
超音波内視鏡検査(EUS)でなければなかなか判断はできません。

 

超音波内視鏡検査(EUS)でのう胞の中の結節をみて、
形態や血流を評価することで、腫瘍か結節かが判断されます。

結節がないか、あるとすれば粘液塊か腫瘍かを区別するために一度は超音波内視鏡検査をうけてくださいね。

(超音波内視鏡についてはこちらで、 超音波内視鏡(EUS)の患者さんへの説明について

IPMNの治療適応と治療内容は?

IPMNの治療内容は、基本的には手術による切除です。
薬などで、とかしたりすることは基本的には難しいです。

どういった患者さんに手術が必要なのかというと、

mm以上の腫瘍がのう胞内にある方が手術の適応になります。
(他に、黄疸がある方、主膵管が10mmを超える方も手術適応になります)

 

これはIPMNの国際診療ガイドラインにかかれているフローチャートに規定されている内容となります。


このあたりの話は、
IPMN(膵のう胞)の手術適応とフォローアップ EUSの適応について

にも書いているので参考にしてくださいね。

IPMNの手術は?

病変の位置によります。

膵頭部にのう胞がある場合は、膵頭十二指腸切除、
膵体尾部のう胞がある場合は、膵体尾部切除の適応となります。

また、最近は腹腔鏡手術といって、小さな傷でできる手術もございます。
手術をする場合は「腹腔鏡手術はできますか?」ということを主治医と相談してみてください。

 

日本肝胆膵外科学会のHPにくわしくシェーマがあるので確認してみてください。

 

IPMNのフォローアップ方法は?

5mm以上の腫瘍がある方は手術されることが多いですが、そうでない方が大半だと思います。

そのような方がどのような間隔で検査をうけていくのか?

ガイドラインではのう胞のサイズによって治療の間隔が異なっています。

のう胞のサイズが、

1cm未満であれば
 初回のみ半年後に再検査、その後2年に1回CT/MRI

1-2cmであれば
 半年毎にMRIやCT検査を行い、その後徐々に検査の間隔を伸ばしていく。

2-3cmであれば
 3-6ヶ月毎にMRIやEUS検査を行う、年に1回はEUSを行う。
(主治医と相談して3ヶ月毎か、6ヶ月毎かはきめましょう)

3cm以上であれば
 3-6ヶ月毎にMRI+EUS検査を行う、状況に応じて手術も検討する。

ガイドラインではこのようにかかれています。
実際は腫瘍マーカーの状態や本人の病気の状態などにより
適宜フォローの間隔は判断されます。

IPMNは膵がんリスクのひとつといわれています

IPMN自体のお話をしてきましたが、膵臓がんの合併にも注意が必要です。

5mm以上の膵のう胞がある方は
膵がん合併のリスクが約6倍高い
ことがしられています。

さらに主膵管拡張(2.5mm以上)もある方は
膵がんリスクがよりあがる(約30倍)
であるめ、さらに注意せねばなりません。

また、その他の膵がんリスクがあるかたもより注意が必要です。

膵のう胞がある方は経過中に膵がんがでてくることがあるため、定期的な検査を受けられることをおすすめします。

まとめ

膵のう胞を指摘された場合、多くの方は非常に怖い思いをされていることと思います。
のう胞内に結節がないことが確認できれば基本的には良性でありあまり心配はいらないと思います。

膵のう胞は、膵臓がんとはまったく異なる病気であり、死ぬまで形がかわらないような方も実際多いです。
高齢では余命に影響がないというデータもございます。

しかしながら膵のう胞があると、膵がんリスクが高いことが知られており
IPMNががんにならないかどうか、膵がんがでてこないかどうか見張る意味でも定期的な検査は必要です。

はじめて指摘された場合は、MRI検査やCT検査、超音波内視鏡検査などでしっかり精査し、
がんがないことをまず確認しましょう。
そして
主治医とよく相談し、フォローをどうしていくかどうかを検討なさってください。

Shunへの質問がございましたらLINEしてくださいね。

 

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