目次
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超音波内視鏡(EUS)下ドレナージとは?:
コメディカルのためのEUSガイド下ドレナージ
まず超音波内視鏡下ドレナージってなんなの???というところから、
超音波内視鏡下ドレナージとは、超音波内視鏡をつかってドレナージをする手技です。
そのまんまですね。
超音波内視鏡下ドレナージ=超音波瘻孔形成術ともいわれます。保険的にはこんな定義がかかれています。
↑の文章をすごく簡単にしますと、
超音波瘻孔形成術=超音波内視鏡下ドレナージは
おなかになんらかの原因で膿がたまった患者さんにたいしてコンベックス型超音波内視鏡を用いて、膿と腸管の間にろう孔を形成して(胃などの消化管にあなをあけて)膿を出す手技。
治療の適応となる病気は、膵仮性嚢胞、膵膿瘍、骨盤内膿瘍、閉塞性黄疸である。
これをシェーマで説明しますと大きく3stepとなります。
基本的にすべての超音波内視鏡下ドレナージ(超音波瘻孔形成術)は以下の3stepとなります。
STEP1.穿刺してガイドワイヤーの挿入
膿瘍を穿刺して、ガイドワイヤーをいれます。対象へのアクセスルートをつくります。
STEP2.穿刺部の拡張
ステントをいれるためには穿刺部を広げる必要があるので、ダイレーターで拡張します。
STEP3.ステントを留置
ステントをおいて処置終了!
腹腔内にたまった膿をコンベックス型超音波内視鏡で確認し、穿刺針で刺して、広げて、ステントをおきます。
これは対象疾患がどんな疾患であっても基本的には同じです。
治療適応となる病気は?
治療適応は大きく4つあります。
①膵仮性嚢胞、②膵膿瘍、③骨盤内膿瘍、④閉塞性黄疸です。
①−③の病気にはEUSガイド下嚢胞ドレナージが、
④にはEUSガイド下胆道ドレナージが行われます。
処置の方法が大きく変わりますの解説していきます。
EUSガイド下嚢胞ドレナージ:EUS-CD (EUS-guided cyst drainage)
急性膵炎の後にできた仮性嚢胞や膵膿瘍(被包化壊死やWONと呼ばれるもの)と骨盤内膿瘍といった
おなかの中にたまった膿を出すためにはEUSガイド下嚢胞ドレナージ(EUS-CD)が行われます。
{おまけ:このEUS-CDという名称はまだ統一されておらず、EUS-PCD(pseudocyst drainage:仮性嚢胞ドレナージ)、
EUS-TD(transluminal drainage:経消化管ドレナージ),EUS-AD(abcess drainage:膿瘍ドレナージ)
など多数の用語がありますが学会の用語集でも定まっていません。当院はEUS-CDとしています。}
EUSガイド下胆道ドレナージ:EUS-BD (EUS-guided biliary drainage)
がんや、結石などなんらかの原因で胆汁うっ滞がおこっている状況である、閉塞性黄疸に対する胆道ドレナージです。
EUS-BDはたくさんの手技があります。肝内胆管、総胆管、胆嚢など、どこを穿刺してドレナージをするかにより手技の名前が異なっており、
なかなか覚えるのが大変です。
EUS-BDには、HGS、CDS、GBDがあります。略語なかなか覚えられませんよね。分解するとちょっとわかりやすいです。
EUS-BD (EUSで胆道をドレナージする手技) | |
EUS-HGS:hepaticogastrostomy | 肝臓(H)と胃(G)をステントでつないで(S)ドレナージする手技 |
EUS-CDS:choledochoduodenostomy | 胆管(C)と十二指腸(D)をステントでつないで(S)ドレナージする手技 |
EUS-GBD:gallbladder drainage | 胆嚢(GB)をドレナージ(D)する手技 |
手技についてもっと詳しく知りたい方は以下も参考にしてください。
「超音波内視鏡下胆道ドレナージの安全施行への診療ガイドライン:2018」
→EUS-RV(ランデブー法)に関しては正確にはEUS-BDではありませんので別項で解説します。
EUS下ドレナージの禁忌は?
①EUSで対象への穿刺ラインに介在する血管があり、避けられない場合… 血管を貫いて刺してはいけません。
②出血傾向を有する場合… 抗凝固は確認しましょう。
③多量の腹水がある場合… 実際はできることもありますが、高難易度であり基本的には避けたほうが無難です。
(「超音波内視鏡下胆道ドレナージの安全施行への診療ガイドライン:2018」より引用)
使用物品
EUS-CDとEUS-BDの処置の手順ですが、3Stepでしたね。使用する物品もそれに対応したものが必要です。
shunのおすすめデバイスは☆マークをつけておきます。(クセがなくてはじめてでも使いやすいものを基準につけました)
STEP1.穿刺とガイドワイヤーの挿入
基本的には19G針と0.025inchのガイドワイヤーの組み合わせとなります。
準備物品
①穿刺針:FNA針は、必ず19Gです。
☆EZshot3(Olympus)19G:◎シャフトがしっかりしているので針がまがりにくい、△鋭角に深部方向に刺すのが難しい。
Sonotip pro control(medicos平田)19G:◎鋭角に深部にさせるが△一回刺すと曲がってしまう。なれないと危険だが一部の上級者は愛用している。
②ガイドワイヤー:0.025inch のガイドワイヤーを使います。
☆Visiglide2(Olympus):◎ループ形成しやすい、◎コーティングもはげにくい、○選択性もそこそこ
M-through(medicos平田):◎ループ形成力高い、◎選択性が高い、△コーティングははげやすい
STEP2.穿刺部の拡張
穿刺ができたら針をぬいて穿刺部の拡張です。穿刺時には、鉗子キャップをはずしています。(つけていると穿刺針は挿入できないため)
よって針をぬいたら、鉗子キャップを忘れず次のデバイスの先端に通してつけておきましょう。
拡張の大きさについては、最終的にどのステントを何本挿入するかにより変わります。
7Frのステントを1本いれるなら、7Frまでの拡張で十分です。
しかし、一部の金属ステントはデリバリーシステムの外径が8.5Frあります。このデバイスをいれていく場合は
通電ダイレータや4mmのバルーンダイレータで拡張が必要です。
EUS-CDで2本7Fr相当のステントをいれる場合は6mmのバルーンで拡張しておけばさっとはいります。
(6mmの拡張=18Fr相当であるため)
準備物品
①ダイレーター: 鈍的に拡張するデバイス
ESダイレータ(ZEONメディカル)は広く使われています。7Frまで拡張できます。
0.025タイプ(先端2.5Fr)と
0.035タイプ(先端3.3Fr)があるのでご注意ください。
◎鈍的に拡張するので手間がかからないが、△ステントとして8.5FrのNiti-Sを使う時は少し拡張不足の印象。
②バルーンダイレーター:バルーンで狭窄部をふくらませる
☆REN(Kaneka medics):先端3.3Frで4mmバルーンがおすすめ、どんなときも頼れる現時点では最強のダイレーター
0.025inch対応なのでデバイスを交換する時は注意。
③通電ダイレーター:
Cystgastroset(6Fr) :8.5Frタイプと間違えないように注意しましょう。◎突破力最高ESTと同じ設定でOK。△出血リスクがある。
Fine025:◎柔軟性の高いフレックスタイプもあります。◎Cystgastrosetより通電範囲が小さいので出血リスクが低い可能性がある。
STEP3.ステントの挿入
ステントは手技により多種多様です。ここを覚えるのは結構たいへんかもしれません。EUS−CDには基本的にはプラスチックステントを留置していましたが、最近AXIOSstentというダンベル型ステントも保険適応となりました。EUS-BDに関しては東京医大の糸井教授がTypeIT(7Fr)というHGS特化のプラスチックステントがあります。金属ステントであればEUS−CDS(EUS-GBD)は6−8cmのステント、EUS-HGSは8−12cmのステントを使用しています。
準備物品
①プラスチックステント:
EUS-BD(HGS)に使用するプラスチックステント
☆Through & Pass TypeIT stent(Gadelius): 7Fr15cm
EUS-BDのために開発された専用のデバイス長いのでリリースも安心。ただしドレナージ力は金属に劣る。
(EUS-CDS,EUS-GBD専用のプラスチックステントはまだ使用可能なものはありません。)
EUS-CDへ使用するプラスチックステント
☆Through & Pass double pigtail stent(Gadelius): 7Fr 長さは嚢胞または膿瘍の大きさに応じて決定します。各種長さをとりそろえましょう。
◎引き戻し可能であり迷入しにくい。◎内腔が7Frであるが、他者の10Fr相当で大きい、△ステントの厚みが薄いので折れやすい。
Medicos pigtail(pigtail):7Fr ◎pigの巻きが大きめであることが特徴。プッシャーで押すタイプであり、△迷入注意。
☆Flexima ENBD catheter (Boston): 経鼻チューブは培養の採取、造影、嚢胞内洗浄の観点から必須のデバイスと考えます。
②金属ステント:
EUS-BD(HGS,CDS,GBD)に使用する金属ステント
☆Niti-S(S-type stent):partial covered type(Century) このステントが現時点ではHGSで多く使用されていると思います。
◎長さはHGSでは10cmか12cmを使用します。8cmでは逆行性胆管炎などのリスクが高いことが報告されていますのでおすすめは10cm以上となります。CDSやGBDでは6cmを使用することが多いです。△デリバリーシステムが8.5Frで太い。いいステントですが太いのでしっかり拡張しないといけません。
Xsuit-NIR: full covered type (Olympus)◎デリバリーシステムが7.5Frと細い。△長さが8cmまでしかない。
HGSにもCDSにも使用している施設はあるようです。
EUS-CDへ使用する金属ステント
HOT−AXIOS(Boston scientific):仮性嚢胞やWONで最近使用できるようになったステントです。非常にドレナージ力が高く有用性の高いステントです。保険収載もされておりますが、使用するためにはボストンサイエンティフィックで研修が必要となります。
詳細はHot AXIOSの適応と使用指針について で解説します。
その他おたすけデバイス
☆①Unevendouble lumen cannula(ショートタイプ:先端分岐のもの)
このカテーテルは先端が0.025inch、側溝に0.035inchのワイヤーが挿入できるユニークなデバイスです。
本当になんどたすけられたかわかりません。先端が3.6Frではありますが、EUS-CD、EUS-BDには必須のデバイスです。
使い方:
1EUS-CDにおける2本めのワイヤー挿入
pigtailステントと、経鼻チューブの2本をいれることがありますが、穿刺して拡張操作を終えた後に、一回このカテーテルをはさみます。
すると2本目のワイヤーがかんたんに挿入できます。
2EUS-BD(HGS)における2本目のワイヤー挿入
HGSなどときに処置が煩雑になるとワイヤーがぬけてしまうことがあります。
特に導入施設では、この2本目のワイヤーが命綱となることが多いです。処置具の挿入もしやすくなりますし、ステントを胆管内に挿入できないときは
硬いワイヤーに変えたりすることもあります。この時にUNEVENがあればさっとワイヤーを交換することができます。
3HGSでワイヤーの位置が末梢方向にいってしまったとき
末梢方向に一旦おいてしまって、このデバイスを挿入します。そして側溝のルーメンで中枢方向をガイドでさぐっていくのです。意外といけますよ。
②Y字コネクタ
穿刺針にY字コネクタをつけて、ガイドワイヤーをロードして造影剤でみたした状態ではじめることもあります。造影して胆管であることが確認できた後にすぐガイドを挿入できるので、無駄がはぶけます。
まとめ
超音波内視鏡下ドレナージは穿刺してガイドワイヤーを挿入し、穿刺した部分を拡張して続くステントを挿入する処置です。こまからところはちがいますが、まず全体のイメージをつかみましょう。
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