超音波内視鏡(EUS)の患者さんへの説明について

超音波内視鏡検査(EUS)について

この記事は医師に「超音波内視鏡(EUS)を受けてください」と言われた患者様やEUSって何ですかと患者さんに聞かれたコメディカルの方、また消化器あるいは胆膵を専門としない医師のために書きました。

すい臓・胆のう・胆管の精密検査について患者さんに説明するためのシェーマを作成しました。

超音波内視鏡検査(EUS)の実際

 

超音波内視鏡(EUS)とは胃カメラの先端にエコーがついている内視鏡のことを言います。一言で言うと胃カメラエコーですね。

EUSの利点は、お腹のエコーと違って胃の裏側にすい臓があるため、皮下脂肪の影響を受けずに観察がしっかりできます。膵尾部はお腹のエコーでは完全には見えないことがありますが、この検査では膵臓が端から端まできれいに見えます。

欠点は、カメラを飲まないといけないということとまだ普及率が低いため全ての施設で実施できているわけではないということがあります。また通常の胃カメラと異なり観察のみで約30分程度の検査時間を必要とするため、鎮静(点滴で麻酔薬を入れる)を実施する必要があります。当日の車やバイク、自転車の運転はできません。高齢の方は麻酔により転倒することもあり、付き添いが必要です。

胃カメラと同様に絶食で行う検査ですが、検査前日は食事を通常どおり撮って頂き、検査当日の朝から絶食にすれば大丈夫です。内服薬がある方は休薬すべき薬(血をさらさらにする薬、糖尿病薬)などの確認をしておきましょう。

EUSは針生検も可能です(針を刺して細胞を採取する)

 

EUSでは小さな病変を見つけるだけではなく、引き続き針生検を行うことができます。

対象となるのは固形の腫瘍でのう胞(液体成分が多いもの)は対象となりません。

すい臓の中にある腫瘍や胃粘膜下腫瘍(胃粘膜の下にもぐっていて胃の表面に露出していない腫瘍)やリンパ節などが対象となります。

検査時間は観察時間も合わせると30-60分程度かかるもともあります。穿刺した場合は一定の確率で偶発症が起こりえます。

我々は偶発症を避けるために常に全力を尽くしていますが、様々な要因により一定の確率で出血や感染、膵炎や消化管穿孔などが起こります。

頻度は非常に低いですが、最悪の場合は緊急手術が必要になるようなこともあります。患者様のもともと持っていたご病気や年齢などが影響しますが、死亡例も非常に頻度は低いものの、ゼロではありません。

がんなどを疑う場合など、検査の利益(緊急性や重要性)が不利益(偶発症)よりも上回ると患者様と医療者が判断した場合にこの検査を実施致します。

EUSは外来で日帰りで行う場合と入院で行う場合がある

  EUS-FNA(針生検)の偶発症が一定の確率で起こり得るため、検査後の経過が問題がないことを入院して確認して退院していただくことが現在一般的です。

ですから、外来検査では基本的にリスクのあるEUS-FNAは実施しておりません。

CTなどの他の検査で腫瘍を疑う場合などははじめから入院して検査を実施した方が良いでしょう。

特に病変に変化がない場合などは外来で検査を実施しても良いかもしれませんが、仮に病変があった場合は針生検ができていないのでもう一度検査を受ける必要があります。

 

 

どんな人がEUSを受けた方がいいのか?

発熱・右側腹部痛・皮膚黄染・褐色尿・白色の便がある場合

すい臓の頭部に病変がある場合は胆管がつまって症状がでることがあります。自覚症状として食欲が低下したり、右側腹部の痛みや38度前後の発熱が出ることもあります(あまり症状が無い方もいます)。

また、尿がいつもよりも赤い、便が白い、白目部分が黄色い、皮膚の色が黄色いなどの黄疸の症状がでる事も多く、このような症状がある方はすぐにCTやMRIなどの精密検査を受けることをお勧めします。これらの検査で異常を認めない場合は小さな病変の可能性を考えてEUSを行います。

腫瘍マーカーの上昇を指摘された場合

すい臓の異常を示す腫瘍マーカーとしては、CEA・CA19-9・DUPAN-2・Span-1があります。胃がん大腸がんなどでも上昇することがあるため、胃カメラや大腸カメラで異常が指摘されなかった場合は胆道やすい臓を精査するために、EUSを受けることを検討しても良いと思います。

画像の異常を指摘された場合

EUSが推奨される患者さんは、腹部エコー検査、CTやMRIですい臓に腫瘍(しこりや影)がある方やのう胞(水ぶくれ)などが指摘された方です。のう胞にはいろいろな種類がありますが、一度は精密検査を受けることをおすすめします。

また、直接腫瘍が見えなくても膵管が2.5~3mmよりも太くなっている方は、精密検査の対象となることがあります。

膵液が腫瘍によってせき止められると、結果として膵管の拡張を認めることがあります。

よって、我々は膵管拡張をみたら拡張の起点に腫瘍がないかいつも探しています。

小さな膵がんの場合は腫瘍が直接見えないことも多いので、このように直接腫瘍が見えなくても間接的に疑う場合は、積極的にEUSなどの精密検査を実施しても良いと思います。

すい臓がんリスクが高い方

すい臓癌のリスクがある方にとってもEUSは重要です。

特に上の図のようなリスク(膵癌診療ガイドライン2016から引用)がある方は一度EUSを受けることをお近くの医師に相談されてもいいかもしれません。

胆嚢結石が胆管に落ちてしまった場合

 胆嚢の中にあるような胆嚢結石は、腹部エコーでよく観察することが可能であり、EUSは必要ありません。

しかし胆嚢の袋から結石が胆管内に落ちることがあります。この結石のうち小さなものはCTやMRIで見えないことがあります。

同様に胆管の腫瘍も小さなものはEUSでないと見えないこともあります。

自覚症状は、発熱・腹痛・黄疸・褐色尿・白色便があります。

まとめ

EUSは超精密検査であり、まずエコー、MRI、CTなどを撮影することが一般的です。これらの検査で異常を指摘された場合や、なんらかの理由でCTやMRIがとれない場合はEUSが必要となります。また、上記の画像で異常がなくても特徴的な自覚症状、腫瘍マーカーの上昇や、間接的にがんを疑うような所見がある場合は、小さな病変を検出するためにEUSを行います。

 

具体的なEUSの内容はこちら

>>QandAでまなぶコメディカル、メーカー、患者さんのための超音波内視鏡検査(EUS)

 

EUSの用語集はこちら

>>EUSの略語集とシェーマとちょこっと解説