「日本胆道学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器病学会、日本膵臓学会 共著の超音波内視鏡下胆道ドレナージの安全施行への診療ガイドライン:2018」 が発表されました。
目次
目次
重要な基本的事項 (定義,適応,成績,偶発症)
Q1超音波内視鏡下胆管ドレナージ
(Endoscopic ultrasound-guided biliary drainage:EUS-BD)とは ?
・EUS-BD とは,超音波内視鏡ガイド下に,経消化 管的に胆道へアプローチし,
ドレナージを行う手 技と定義される.
Q2 EUS-BD の適応は?
・胆管ドレナージが必要で ERC不成功あるいは困難例が適応である.
Q3 EUS-BD の禁忌は?
・EUS で胆管が描出できない,穿刺ラインに介在する血管や他臓器を避けることができない,
出血傾向を有する,多量の腹水を有する症例などは,禁忌と考えられる.
Q4 EUS-BD の短期成績は ?
・手技に熟練した施設におけるEUS-BDの手技成功率・臨床的成功率は 90%以上の報告が多い.
Q5 EUS-BD の長期成績は ?
・EUS-BD の中期・長期成績の報告は少ないが,開存期間は 3~6 カ月程度の報告が多い.
Q6 EUS-BD の偶発症は?
・EUS-BD の偶発症は,胆汁漏,Stent 逸脱,出血, 穿孔,腹膜炎などが報告されている.
クリニカルクエスチョン
エビデンスレベル
A:High(強い根拠に基づく)→無作為化比較試験,システマ ティックレビュー,メタ解析
B:Moderate(中程度の根拠に基づく)
C:Low(弱い根拠に基づく)→観察研究(コホート,ケース コントロール)
D: Very low(とても弱い根拠に基づく)→ケース・シリーズ, 症例報告
推奨の強さ
1.強く推奨(実施することを推奨する,実施 しないことを推奨する)
2.弱く推奨(実施することを提案する,実施 しないことを提案する)
CQ1 EUS-BD における各種の手技の選択をどのよう にするのか?
・胆管閉塞部位や十二指腸閉塞の有無,再建術式な どを考慮し病態に応じて選択する.
[推奨の強さ 2,エビデンスレベル D]
CQ2 EUS-BD に適した EUS スコープは?
・コンベックス型 EUS スコープのみが使用可能で ある
[推奨の強さ 1,エビデンスレベル C]
CQ3 EUS-BD に適した穿刺針は?
・19G FNA 針の使用を推奨する.
[推奨の強さ 1,エビデンスレベル B]
CQ4 EUS-BD に適したガイドワイヤは?
・0.035inch またはハードタイプの 0.025inch の ERCP 用のガイドワイヤの使用を提案する.
[推奨の強さ 2,エビデンスレベル C]
CQ5 EUS-BD の穿刺経路の拡張に適したデバイス は?
・胆道拡張用のブジーカテーテル,バルーンを推奨 するが,
拡張困難例には同軸通電ダイレータの使 用を提案する.
[推奨の強さ 2,エビデンスレベル C]
CQ6 EUS-BD ではどのような stent を使用すべき か?
・Covered SEMS の使用を提案するが,症例に応じてPlastic stent の使用を考慮する.
[推奨の強さ 2,エビデンスレベル B]
CQ7 EUS-BD 時に併用すべき治療は?
・胆管炎合併例では抗菌薬投与を提案する.
[推奨の強さ 2,エビデンスレベル D]
CQ8 EUS-BD 後の術後管理・観察はどのようにすべ きか?
・EUS-BD 後は経過を注意深く観察し,偶発症の発生が疑われる場合には
適切な処置を行うことを提 案する.
[推奨の強さ 2,エビデンスレベル D]
CQ9 EUS-BD の偶発症の予防と対処法はどのようにすべきか?
・EUS-BD の偶発症に対する予防と対処方法は確立 していないため,施行にあたっては
起こり得る偶 発症を熟知したうえで慎重に適応を選択し,手技 に習熟した術者が偶発症に対応できる体制の下で 行うことを提案する.
[推奨の強さ 2,エビデンスレベル D]
CQ10 EUS-BD はどのような医師が施行すべきか?
・ERCP,EUS-FNA両方の関連手技に熟練した内視 鏡医,あるいはその監督下の内視鏡医が施行する ことを提案する.
[推奨度の強さ 2,エビデンスレベル D]
CQ11 EUS-BD の教育はどのようにすべきか?
・十分な経験のある施設あるいは内視鏡医が,講義, 実技供覧,ハンズオントレーニングの段階を踏ん で教育することを提案する.
[推奨の強さ 2,エビデンスレベル D]
CQ12 EUS-BD はどのような診療体制でおこなうべ きか?
・外科医,放射線科医の協力が得られる診療体制のもとで行うことを提案する. [推奨度の強さ 2,エビデンスレベル D]
CQ13 EUS-BD の倫理性の確保のためにはどうすれ ばよいか?
・適応を十分に考慮し,インフォームドコンセント のもとに,細心の注意を払って手技を行うことを 提案する.
[推奨度の強さ 2,エビデンスレベル D]
「日本胆道学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器病学会、日本膵臓学会 共著の超音波内視鏡下胆道ドレナージの安全施行への診療ガイドライン:2018」 から引用転載
まとめ
今回のガイドラインで6つの定義と13のクリニカルクエスチョンが示されました。
特にEUS–BDの適応や禁忌がはじめてしめされただけでなく、実施する診療体制や教育についても記載されており、EUS–BDにたずさわる方は熟読しておく必要があります。