こんにちは。あるhigh-volume-centerで勤務させて頂いているhisaと申します。
卒後8年目です。今回、shun先生より依頼もあり、EUS channelで記事を書かせて頂くことになりました。
目次
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卒後8年目になって
私の病院では、自分は胆膵を主に診療しており、EUS・ERCPに専念させてもらっています。
幸いなことに今まで、EUS下ドレナージに関わらせてもらうことが多かったです。
EUS下ドレナージの助手は50-100件は経験させて頂いたのですが、
その中でも特にEUS-HGSの助手をする際に
色々な失敗やこのようなことを事前に教えてもらったら良かったのに!!
と思ったことなどがありましたので、
そのことを記事にさせて頂きます。
EUS-HGSの際の助手としての注意点
① まずは人の処置の観察、十分なビデオなどでの予習しましょう
EUSでの通常観察やEUS-FNA、ERCPの症例数はたくさんあるという施設でも、
まだまだEUS下ドレナージの症例数がすくないところが多いと思います。
数少ない症例の中からだけで学ぶことは難しいので、
動画つき教材で学習する必要があります。
shunさんの記事や動画、
HGSのコツと実際:チャネル内リリースで安全なHGSをマスターしよう
今まで紹介されたHGSの解説が書かれた本以外では、
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・
に付属している動画もオススメです。
胆膵の動画はやはり消化管に比べると少ないので、
少ない資料から多くを学ぶ必要があります。
② HGSの手順を把握しよう
まずは①穿刺→②造影、胆汁の吸引→③拡張、guidewire(GW)の挿入→④seeking→⑤ステント挿入。
必要時にUnevenを挿入してDouble gidewire(DGW)法※にします。
主に、こういう流れですが
②の際に
胆汁の吸引圧はかけ過ぎないこと、
造影はゆっくり行うこと
もポイントと思います。
吸引をかけすぎるとFNA針の先端と胆管壁がくっついてしまい、
GWが入りにくくなってしまうからです。
また、穿刺した管腔が血管であることもあり、
造影して造影剤が滞留しなければ胆管内でない可能性があります。
※DGW法とは
胆管内にガイドを留置したら、Unevenカテーテル(piolax:先端が短いタイプ)を挿入します。
この際、拡張する時としない時は様々ですが、
拡張する場合は、REN、ES dilatorのどちらかを使うことが多いです。
1st dilatorとしてFine 0.25は使わないでしょう。
(Double Guidewire Technique Using an Uneven Double Lumen Catheter for Endoscopic Ultrasound-Guided Interventionsから引用)
Uneven カテーテルを胆管内にしっかりいれます。
Unevenはdouble lumenになっているので、もう1つのlumenからGWを入れたらDGWの出来上がりです。
DGWのメリット
・DGWによって、ステントが入りやすくなる
・万が一1本GWが抜けてももう一本残っているので安心です。
個人的には、EUS-HGSだけでなく、EUS下ドレナージの際には
よほどのことがない限りDGWにすべきと思います。
なぜなら、ERCPの時と違い、
GWが抜けてしまった時のデメリットが大きすぎるからです。
DGWについては、東大の中井先生が報告されております。
「Double Guidewire Technique Using an Uneven Double Lumen Catheter for Endoscopic Ultrasound-Guided Interventions」
こちらも参考にどうぞ。
③ 自分の施設にあるGWを把握しましょう
このGWの選択が大事にはなると思います。
多く使われているのが、0.025inch VisiGlide2(Olympus)、M-Though(medicos hirata)とは思われます。
しかし、最近大阪医大の小倉先生が、
「Reverse knuckle guidewire insertion technique for
endoscopic ultrasound-guided hepaticogastrostomy using a novel 0.025-inch guidewire」、
0.025inch MICHISUJI(piolax)というGWが有用であると報告しています。
名前の通り探りやすいガイドです。
EUS-HGSの際にGWが末梢にしかいかない時などにオススメです。
または、0.025inch EndoSelecterもオススメです。
EUS-HGSで治療困難な場合は、seeking能力の高いGWに早めに変えることが大切です。
④ 具体的なGW選択について
なので、自分の中のGWの優先順位として、
1本目のGW:0.025inch VisiGlide2 or M-Through
seeking困難時:0.025inch Endoselecter
seekingの角度がかなり急な時:0.025inch MICHISUJI
1st gudewireは穿刺した時の造影で
末梢胆管にしかいかなさそうな時は、
最初からMICHISUJI or Endoselecter(Boston)を使います。
2本目のGW(DGWする際):0.035inch jagwire or RevoWave ultra hard (Piolax)
肝内胆管の拡張があまりない場合:0.025inch VisiGlide2 or M-Throughとします。
個人的に肝内胆管の拡張が弱い時は、
seeking能力の必要な0.025inch GWを優先させています。
理由としては拡張が弱いと右葉の枝など探ろうとした際に、
1本目のGWだけでなく、2本目のGWでも探れるようにです。
もちろん、0.035inch GWを出してから、
探りづらい時に改めて別の0.025inch GWを出しても良いのですが、
コストは節約出来るところは節約すべきと思います。
あらかじめ、しっかりstrategyを立ててGWを出す本数は最小限にしたいところです。
自分の経験での失敗談
① Uneven挿入後の交換の失敗:double guidewire留置後
おそらく、多くの施設でDGWにして処置するとは思います。
以前、別の病院でEUS-HGSでUnevenを挿入して、GWを2本入れた後、Unevenを引き抜く際に、
2本のGWのうち1本を別の助手がもう1本を自分が操作して、
GWを留置しようとした際に、
息が合わなかったせいか2本とも抜けてしまったことがあります。
この時、何度やっても抜けてしまったので、2人でやると微妙なズレが起きて抜けてしまったのだと思います。
high-volume-centerで人が多いが故に起きた失敗です。
トラブルシューティング
この経験の後は、UNEVENのDGWは、一人で2本同時に操作して、留置するようにしています。
そうすることでGWは抜けたことはありません。
② GWによる嚢胞壁の穿孔
EUS-HGSの際は無理に押しすぎると胆管穿通など起こすことあるのは想像出来ると思うのですが、
左肝膿瘍のドレナージ(EUS-LAD:liver abscess drainage)、
仮性嚢胞の穿刺(EUS-CD)を行う際に
嚢胞 or 膿瘍壁が薄いケースで、
強くGWを押しすぎたことにより嚢胞壁が穿通することがありました。
嚢胞内でGWを処置の安定のために何重かに巻いておきたかったため、
GWを奥まで留置しようとしようとしていました。
あれ?
造影剤が嚢胞の外に漏れている・・・
GWの先端も嚢胞の外かも・・・
頭の中は真っ白です・・・
トラブルシューティング
この時は、皆で相談して、DGWにしていたため、外に出たGWは抜いて、
残っていたGWにENBD tubeを留置して事なきを得ましたが・・・。
別の症例でも
このケースだけではなく、
数ヶ月後に別の人が介助をしていた際にも同じようなことが起きました。
この際は、
GWが2本とも嚢胞の外に行ってしまったため、再穿刺し直しましたが・・・。
壁が薄い嚢胞 or 膿瘍の際のGW操作は注意が必要でした。
このことがあってから、EUS-LADやEUS-CDなどの際は、
事前に嚢胞や膿瘍はしっかり被包化されていることをCTなどで把握します。
穿刺対象がしっかり被包化されていない場合はGW操作は優しく、
そしてGWの留置位置は奥まで入れすぎないこととしています。
個人的には胆膵領域はこれからの分野であり、
EUSインターベンションは今後もどんどん発展していくと思います。いつかは、
EUS下ドレナージはERCPより得意です!
そんなことを言う先生が増える時代を期待しています。
by hisa
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