EUS トレーニング

EUS-HGSのマニュアル・実践のコツ:チャネル内リリースで安全なHGSをマスターしよう

投稿日:2019年1月25日 更新日:

EUSWeb教本|コンベックス型超音波内視鏡(EUS)トレーニング法 ・描出のコツ 

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更新履歴
2020/09/24最新のデバイスを追記
2019/08/26 Youtube動画を追加 「10分で【EUS-HGS】完全攻略 」

目次

EUS-HGSマニュアル

超音波内視鏡下瘻孔形成術による閉塞性黄疸治療(EUS-guided biliary drainage:EUS-BD)の手技のひとつであるEUS-guided hepaticogastrostomy:EUS-HGSとは、

肝内胆管と胃を吻合してドレナージする手技です。

EUS-HGSってむずかしいんじゃない?って思いますよね。実際むずかしいです。

なぜむずかしいのかというと、

ターゲットが他のEUSガイド下治療と比較して小さいです。数ミリの肝内胆管を穿刺します。

そして、ステントのリリースも失敗すれば腹腔内にとりのこされるかもしれません!?

 

このように、

HGSのことを良くしらなければ、

絶対にはまってしまうような初見殺しのいろいろな罠がHGSにはあります

 

よって学会から注意喚起として「超音波内視鏡下瘻孔形成術による閉塞性黄疸治療に関する提言」が出されています。

まずはこれをよく読んでHGSのことを学ぶ前にEUS-BDができる環境を整えることからはじめましょう。

EUS-HGSを始める前にすべきこと3つ 

超音波内視鏡下瘻孔形成術による閉塞性黄疸治療に関する提言

超音波内視鏡下瘻孔形成術による閉塞性黄疸治療(EUS-guided biliary drainage:EUS-BD)は超音波内視鏡ガイド下に、経消化管的に胆道にアプローチし、ドレナージを行う手技である。

本手技は、原則的に経乳頭的胆道ドレナージが困難な症例において、経皮経肝胆道ドレナージ、外科治療に並んで考慮される治療の選択肢の一つである。

本手技の短期的有効性について多数の報告があるが、手技に関連した偶発症として胆汁性腹膜炎、出血、穿孔などが知られており、時に重症化する例も存在する

長期成績に関しては、多数例での報告は少ないのが現状である。また、手技の標準化、偶発症の予防策など解決すべき問題も残っている。

従って本手技を行う際は、その適応を十分考慮し、手技、成績、偶発症、代替手段を患者さんに十分に説明し同意を得た上で行うべきである。また、偶発症が発生した際に迅速に対応できる、外科医、放射線科医などを含めた診療体制を予め病院内で構築しておく必要がある

更に、本手技の施行医および介助医は、手技に関する十分な知識を有し、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)関連手技および超音波内視鏡ガイド下穿刺術(EUS-FNA)に熟練していることが必要である。

初回実施前に経験の豊富な施設で見学、研修を行うことが望ましい。初回実施時にはこの手技に精通した医師の下で行うことを推奨する。

 

すなわち、

①患者に代替治療を含めた十分な説明をする。

偶発症の内容、代替治療、場合によっては緊急手術になる可能性や患者の状態により死亡するリスクはあることを説明し、診療録に残しましょう。

②ハイボリュームセンターに見学、修行に行く。そして、エキスパートの協力を得る

ハイボリュームセンターで見学して勉強した後、実際にHGSをするとなった場合は、患者さんをハイボリュームセンターに転院させて処置当日に見学に行くパターン

エキスパートに自施設に来てもらって処置をするパターンがあります。

どちらも問題ないと思いますが、最終的に必ずエキスパートとともに処置ができる環境にしましょう。

③外科医、放射線科医のバックアップを得る(適応も複数の科で相談をする)

自施設で処置をする場合、外科医、放射線科医のバックアップがある程度得られる状況を作ることも大切です。

本当にEUS-BDの適応か、各科だけでなく患者さんの立場からも考える必要があります。

 

EUS-BDの適応

実際どんな人が適応となるのでしょうか?もちろん、施設の基準やエキスパートの人数などにより異なると思います。

基本的な適応の考え方は、

代替治療である、胆管空腸吻合と、経皮経肝胆道ドレナージとのバランスを検討する必要があります。

 

もちろん、ERCP困難例が導入施設の場合は大前提です。

 

ERCP困難例とは、胆管挿管困難、乳頭部または胆管空調吻合部に到達不能(腫瘍の浸潤や十二指腸ステントなど)というような状況です。

これに加えて経皮的ドレナージが困難(高齢、認知症などの観点で自己抜去のリスクがある。経皮ルートに腹水が介在する。)

あるいは、外科的治療である胆管空腸吻合が困難(複数回の開腹手術歴がある、腹膜播種が高度、肝内に腫瘍進展がある)

これらの説明を行って患者様に治療方針の選択をしてもらう必要があります。

EUS-BDの保険適応も知っておきましょう。

K682-4 超音波内視鏡下瘻孔形成術(腹腔内膿瘍に対するもの)25,570点
 
腹腔内の膿瘍形成に対し,コンベックス型超音波内視鏡を用いて瘻孔形成術を行った場合に算定する.

この際の超音波検査及び内視鏡検査の費用は所定点数に含まれる.
なお,膵仮性囊胞,膵膿瘍,閉塞性黄疸又は骨盤腔内膿瘍に対し,
コンベックス型超音波内視鏡を用いて瘻孔形成術を行った場合についても本区分で算定する.

 

点数は経皮経肝胆管ドレナージ(10800点)と比較しても高くなっています。実施した場合はきっちり算定しましょう。

EUS-HGSの実際

HGS単独の場合をすごくシンプルに説明したシェーマです。

それぞれの手順を詳細に解説していきます。

HGS直前に確認しましょう:EUS-BD手順チェックシート

デバイスの準備と手順の確認:準備物品と手順を以下の手順チェックシートで周囲のスタッフとよく確認しておきましょう。

番号 EUS-BD手順チェックシート できたらチェック
すべての使用デバイスの準備の確認(針、ステント、dilator)  
適切な穿刺位置の決定(B2,B3,GBD,CBD,AGS)  
3 穿刺すべき胆管の適切な角度での描出  
4 ドプラによる介在血管の評価  
5 呼吸およびガイドワイヤ誘導を意識した適切な穿刺  
6 胆汁逆流の有無確認と造影、生食フラッシュ  
7 ガイド(visi2)挿入、デバイスの交換   
8 穿刺キャップの確認  
9 EUS画面の維持(術者)  
10 透視画面の確認依頼(介助、透視係)  
11 適切なdilationの実施(バルーンの選択も含めて)  
12 適切なステントの選択と留置位置の選択  
13 胆管内あるいは、胆嚢へのステント挿入  
14 スコープ圧着状態でのチャネル内リリース  
15 ステントのPushを意識したリリース  
16 ガイドワイヤとステントの安全な抜去  
17 Xp撮影 Free air 、造影剤流出の確認   

おすすめ使用デバイス

穿刺針:EZshot3

①EZshot3(19G) 現時点では穿刺性能と耐久性を考えると第一選択になります。非常に鋭利なのが第一の特徴で、第二の特徴としてシャフトがしっかりしているので前後左右へのずれが少なく、同一画面での穿刺が可能です。しかし、外筒がやや太いことから、エレベーターによる穿刺角度の調整が難しく穿刺ラインが浅くなりやすいという問題点はあります。もっとも信頼できる針のひとつです。

②Sonotip(19G) 穿刺性能は高いですが耐久性が低いです。しかし垂直に刺すという点においては最もすぐれた針です。外筒が細いことと針がしなるため深く刺すことが可能です。しかし耐久性には問題があり1,2回刺すと曲がってしまうため狙い通りに刺すためには屈曲を計算した穿刺が必要です。エキスパート向けの針ですね。

 

ガイドワイヤー:Endoselector

エコー画面での視認性がEndoselectorが抜群に優れています。またデバイスとの干渉も極小でスムースです。
トルク性、先端荷重の低さを考えると2本目は、0.025inchのM-throughか、Visiglide2がおすすめです。

このガイド操作がHGSが成功するかどうかの決め手になりますのでできるだけ選択性が高く、
デバイスの追随性の良いものを使用する必要があります。

 

HGS用ステント:Niti-S(S-type stent)が現時点ではおすすめ

Niti-S(S-type stent)逸脱しにくいpartial covered typeです。このステントが現時点ではHGSで最も使用されていると思います。

長さは10cmか12cmを使用します。8cmでは逆行性胆管炎などのリスクが高いことが報告されていますのでおすすめは10cm以上となります。

また、肝臓側に1cmアンカバー部分があるため逸脱もしにくいですし、B2B3根部までしっかりいれてもアンカバー部分のために区域性胆管炎も起こしにくいです。

問題点はデリバリー系が8.5Frであることです。これが、6Frくらいになれば穿刺部の拡張操作もいらなくなるんですが、、、
拡張操作が一個へるとさらに10分は短縮できるんですが、、、

瘻孔の拡張デバイス:REN(KANEKA)が最高!!

①バルーンダイレーターや、②鈍的拡張可能なソーヘンドラ、ESダイレーター、③通電ダイレーター(Cysto-Gastro-SetFine025)の3パターンありますがRENというバルーンダイレーターが非常に優秀です。

バルーンダイレーターのREN(0.025inch対応)

RENがおすすめできる理由は3つあります。

①先端が3.3Frで細く、テーパーが最高に良い!

②シャフトにコシがあり狭窄の突破力がハンパなくいい!

③サイズも豊富で無駄に拡張しすぎない!

おすすめのバルーンサイズは、HGS単独ならREN4mmですが、

RENの4mmの使用理由は4mm=12Fr相当の拡張をしたいからです。HGSのステントとしてよく使われるCenturyのステントがシャフト8.5Frのデリバリー径なので4mm拡張されていれば問題なく通ります。3mmだとちょっと経験的にデバイスの挿入が厳しいことが多い印象です。

HGSは通電ダイレーターは私自身は、絶対に使いません。なぜならHGSで穿刺する胆管は常に脈管と並走していることが多く、出血リスクも高いからです。バルーンで十分ですよ。

HGSといえば当院ではREN4mmで一択です。RENの欠点は0.035inchのワイヤーが通らないことですがそれほど問題にはなりません。
最近0.035inch対応のものも販売しているようです。

 

EUS-BDの体位

HGSの体位

通常のERCPと同様ですが体位は基本的には腹臥位です。

EUS-CDSの穿刺ラインチェック、EUS-GBDの穿刺ラインチェックは、最初にしておきましょう。

球部(幽門輪)へのスコープ挿入が難しければすぐに側臥位へ変更しましょう。

管腔を確認せずに安易に押すと穿孔します。

 

EUS-BDのスコープ操作

スコープ操作:針は移動するときはぬいてください!

19Gの針をスコープにいれている状態では球部、下行部へ挿入するのは危険です。

ただでさえ剛性の高いスコープがより硬くなり穿孔しやすくなります。

基本的に穿刺する部位に到着してから針を挿入しましょう。

 

例えば、HGS不成功でEUS-CDSやEUS-GBDへと処置内容を切り替えるとき、

注意していてもHGS不成功のテンションを引きずってしまいます。

  →このような時こそ、慎重に!

19G針を抜いて、側臥位にして、深呼吸してからスコープを球部へとすすめましょう。

 

1. 胆管穿刺

手順:EZshot319GでB3あるいはB2を胃内から穿刺します。

HGS穿刺のコツ:基本はゆっくり、セルジンガーは☓長めに走行している枝を穿刺!

HGSで穿刺すべき胆管

なるべく1cm程度走行が見えるところを穿刺しましょう。一瞬だけみえる枝は、屈曲しているから連続して見えないのです。
屈曲した枝を穿刺してしまうと、その後のデバイス挿入が難しいことがあります。

東京大学の中井先生は、胆管の枝が合流する又を狙うと良いとおっしゃっていました。
胆管の枝が集まる又の部分は、穿刺時につぶれにくいという考え方です。

また胆管が、○にみえるところと、直線にみえるところとどちらがいいかは賛否があります。

穿刺部位

穿刺部位はあまり末梢になりすぎないように注意!
胃壁から胆管穿刺部までの肝臓実質が短いとデバイスが進みにくいことがあります。
肝実質は1−2cmはあった方が安定する印象です。

穿刺速度

ゆっくり、患者の呼吸が大きい、早い場合はシャープに穿刺をすると良いでしょう。
胃壁はある程度抵抗があるため初速をある程度速く刺してもいいかもしれません。

穿刺角度

刺した後ワイヤーが中枢側へいくような枝を穿刺しましょう。
呼吸のタイミングを意識することも大切です。患者さんが大きく息をすると肺がふくらんで
肝臓が画面左へ移動します。その際に、針をすすめるとより鋭角に穿刺できます。

 

穿刺方法

スタイレットを抜いて穿刺すると針の中に肝組織が入ってしまうため、胆管内に挿入されているのに胆汁逆流が確認できないことがあります!

針の中にスタイレットと通す方法とガイドワイヤーを通して穿刺する方法があります。

スタイレット法
肝組織がとれない程度にスタイレットを数ミリ引いておき、穿刺できたら押し出すと
針の中の少量のairが胆管内に注入され、胆管内であることが確認できます。

 

ガイドワイヤー法:スタイレットの代わりにガイドワイヤーを穿刺針の中にロードしておく方法です。
         Y字コネクタを使用する場合は造影も可能となります。

この方法は、スタイレットを抜いている間に針が知らないうちに奥に入りすぎたり、抜けてしまったりすることを防ぐために考えられた方法です。刺したらすぐワイヤー。Yコネをつければ造影剤も注入できて胆管内ということをすぐに確認することができます。
この方法の問題点はYコネがなければ、穿刺したときに胆管内にうまく入らなかった場合、引く必要があるのでガイドワイヤーがささくれる可能性があります

 

セルジンガー法は基本的には以下の2つの理由で基本的には✗ダメです:(私の好みですが、、、)
①ワイヤーが胆管を貫通する道を作ってしまう可能性があること、
②造影した時に造影剤が血管内へ漏れてしまう可能性がある。おすすめしません(胆管と血管は基本並走している)。

 

胆管内に穿刺針があるか確認する方法

胆汁逆流の確認
基本です。穿刺したらシリンジで引いて胆汁を確認しましょう。シリンジには延長チューブはつけておいた方が良いです。
ちゃんとささっていれば基本的には胆汁は引けるはずです。

スタイレットによる microbubble sign
2mm程度スタイレットを引き胆管に刺さったと思ったらスタイレットを奥にいれます。そうすると針の中の少量のairが胆管に入って確実に胆管内であることが確認できます。結構スタイレットが硬くて押し込みにくいこともおおいので無理はしないでいいと思います。

Wash out sign
胆管は血管と比べ流速が遅いため造影剤滞留し、なかなかwash out されません。
造影剤をいれて1秒くらいですぐにwash out する場合は、胆管内ではなく血管内です
造影所見で血管内と判断した際はすぐに針を引きましょう。

血管内留置の可能性がある場合、カテーテルの挿入は、穿刺部を広げる可能性があり挿入してはいけません。

 

B2穿刺のテクニック

B2穿刺は、走行が穿刺ラインと水平になるため穿刺しやすいです。同様にガイドワイヤー  の挿入も容易です。
しかし、食道穿刺になりやすいので縦隔炎のリスクがあります。狙う場合はしっかり透視や内視鏡画面で確認することが重要です。

B2穿刺のpoint:透視画像の確認や、クリップを使用して食道穿刺を防ぐ!

事前に食道胃接合部に直視鏡でクリップを置くと食道穿刺は確実に防げます。

B3穿刺のテクニック

B3穿刺は少し難易度が高めです。胆管の走行に対して垂直に穿刺する事になり、針の微妙なコントロールが必要とされるからです。更に、胆管拡張が大きければそんなに問題は無いですが、胆管が細い場合はめちゃくちゃ難易度が高いです。

B3穿刺のpoint:穿刺後のガイドの動きをイメージして穿刺する。

しっかりと、エレベーター鉗子をたてて肝臓に対して深い角度で穿刺する事が中枢側にワイヤーを運ぶためには重要です。エレベーターを寝かせて、肝臓に対して浅い角度で穿刺するとワイヤーが末梢胆管に向きやすくなります。

コツはエレベータから外筒をほんの少しだけだした状態でエレベーターをmaxにかけることです。

B3はほぼ確実に胃内であること、肝臓を比較的大きく取れるのでデバイスの挿入は安定します。

2. 胆管造影

手順:穿刺して胆汁を確認し、穿刺針から造影剤を注入して
         Xpを一枚撮影(#1)する。

(⇩この写真(#1)がステント留置時に先端部をどの位置にするかの重要な根拠になる)

この一枚がすごく大切です!

HGS造影のコツ:穿刺直後の画像がステントの留置位置決定に必要!

コツ:生理食塩水でしっかり後押しして、針の中のワイヤーの滑りを良くする。生食で押すとワイヤーのXpでの視認性も向上します。
あるいはワイヤーがすすまず、再穿刺になっても胆管を生食でしっかりと拡張させておくと次の穿刺に役立つ可能性があります。

3. ガイドワイヤーの挿入

手順:穿刺針からEndoselectorを挿入し、
ワイヤーを総胆管へ留置する(可能であればガイドの安定のため、乳頭を突破する)。

ガイドワイヤーは断裂する可能性があるので一回押したら基本は引いてはいけません!!。
押し引きしすぎると断裂して体内に残存してしまう可能性があります。(あとで家族様に説明するのもつらいです、、、)
少し引けばどうにかなりそうならちぎれないことを祈りながらそーっと引きましょう。
ガイドがどうにも動きがおかしくなりはじめたらささくれてるかもしれないので針ごとそーっとひきましょう。

もし、ガイドが末梢に行ってしまった場合は
①リカバリーできそうならMTWやstartip(olympus)、Unevenなどに交換してしまってじっくりさぐる
②さっさと諦めて再穿刺。

HGSガイドのコツ:ガイドは押したら引かない!

引くとしても針ごとそーっとね

4. デバイスの挿入

 ワイヤーが挿入されたら、その後の展開次第で次のデバイスを挿入します。

 もっと造影したい場合は造影カテとしてMTWをいれましょう。穿刺した胆管の枝の走行が良ければ入りますがもしMTWが通らなかったら、

 もっと細いデバイスであるREN(先端3.3Fr:KANEKA)や、Startip(先端3.5Fr)に変更することも一つです。

 先細カテーテルを留置してそのシャフトで道を拡張してからMTWをいれましょう。

 バルーンを拡張してしまうと胆汁がそこから漏れてしまうので、ステント留置の直前にしましょう。

5. 瘻孔拡張

 手順:穿刺後は鉗子キャップをつけて穿刺孔を
           RENの4mmバルーンで拡張します(HGS単独の場合)。

 

HGS瘻孔拡張のコツ①:最終的にいれるステントで拡張するべき径を検討する。

下の図のようにどのステントを使用するかにより必要な拡張の径は異なります。

よって、ステントの特性を知り、拡張の必要径を決めることが最も重要です。

瘻孔の拡張デバイスは、①バルーンダイレーターや、②鈍的拡張可能なソーヘンドラ、ESダイレーター、
③通電ダイレーター(Cysto-Gastro-SetFine025)の3パターンありますがRENというバルーンが非常に優秀です。

HGS瘻孔拡張のコツ②:バルーンダイレーターのRENを使う!

RENがおすすめできる理由は3つあります。

①先端が3.3Frで細く、テーパーが最高に良い!
②シャフトにコシがあり狭窄の突破力がハンパなくいい!
③サイズも豊富で無駄に拡張しすぎない!

おすすめのバルーンサイズは、HGS単独ならREN4mmですが、

RENの4mmの使用理由は4mm=12Fr相当の拡張をしたいからです。HGSのステントとしてよく使われるCenturyのステントがシャフト8.5Frのデリバリー径なので4mm拡張されていれば問題なく通ります。3mmだとちょっと経験的にデバイスの挿入が厳しいことが多い印象です。

 

6. ステントの挿入位置の決定

手順:ステントの最先端はB2、B3根部までいれる。
穿刺時に撮影した写真(#1)を
参照して、穿刺部より奥にステントを留置する。


HGSステント挿入位置のコツ:B2、B3合流部くらいまでしっかり目に先端を設定する

穿刺部ぎりぎりの留置だと、うまくドレナージされないことがあります。
B2、B3分岐部までしっかりいれると胆管のキンクが減るためにminorな胆管炎は起こしにくいです。
B3はつぶしても区域性胆管炎問題なことが多い。

7. ステントリリース

手順:ステントは10cm~12cmの長さのものを使用して
鉗子チャネル内に2センチくらいリリースします。
そして胃壁に押し付けながらpush気味でリリースを行います。
内視鏡画面でステントを確認できる視野をダウンと右回転で作り、
プッシュリリースで全てのステントを展開して処置終了。
(最後のひねりでステントがぬけないように注意!)

注意点①:ステント留置部の肝内胆管拡張が8mm以上の時は、押しすぎてステントが奥に迷入しないように注意する。

注意点②:腹水がある症例はキャンディ現象になって腹腔内が長くなることがあるのでリリースの際は特にしっかり肝臓に押し付ける。

HGSステントリリースのコツ:チャネル内リリースが迷入をゼロにする。

このチャネル内リリースがEUS-HGSの最重要ポイントとなります。このリリースが開発されてから格段にEUS-HGSは、進歩しました。

EUS-HGSで最も危険な偶発症は、ステントの迷入ですが、チャネル内リリース(push法)によりステントの腹腔内迷入がゼロにできるようになったのです。

EUS-HGSの歴史:チャネル内リリースをしていないHGSの導入の時代はステントを食道の方向へ展開しながら引いていくリリースが主流でした。この方法の欠点は腹腔内の空間が広がりやすいことでステントが腹腔内にとりのこされる:迷入てあったり、引っ張りすぎることでステントが全部すっぽぬけてしまう:逸脱が起こりやすいことでした。これをpullのリリースと定義します。今思えばこのpullのリリースはHGSの偶発症を大量生産し、EUS-BDの普及を阻害した最大の要因であったのでしょう。そこで開発されたのが、pushのリリース法であるチャネル内リリースです。

チャネル内リリース(pushのリリース)とは、

①スコープを胃に押し付けた状態のままステントを展開していき、チャネルの中までステントを数センチ(2-3cm)展開してしまいます。

②スコープ内のチャネル内でステントを展開した後は、腹腔の空間を押しつぶしている状態が維持されるようにデバイスを少しずつ押し出しながらステントをすべて胃内で展開し、デバイスを押し出して終了です。

(この時はスコープは胃に押し付けない。ステントのデリバリーデバイスを胃に向かっておしつけながらステントを展開する感じです)

スコープの中で展開したステントは確実に胃内にありますから、肝門部側のステント先端部がずれさえしなければ、
ステントの腹腔への迷入は絶対に起こりません。
ステントの逸脱もpushしながらリリースするので起こりませんよね。

 

まさに、HGSの革命的リリース方法です。
このリリースこそが、先進施設に見学に行きコツを学ぶ必要がある最大のコツです。

逆にこれを知らなければ地獄を見ます。

正直なところ、チャネル内リリースを知ってるか知らないかでこの手技の難易度が大きく変わるので、知らない方、見たこと無い人達だけではEUS-HGSをする資格は無いと思います。学会の提言に書いてあったエキスパートの参加が必要な理由の一つとも言えるでしょう。

ここまでのまとめを10分で

<HGSのトラブルシューティング>

1.どうしても狙ったところに穿刺できない

→針の外筒を2mm程度だけ出してエレベーターmax。
→呼吸のタイミングを読んで穿刺する。息をすって肝臓が右にいったときにすすめる!

→sonotipに変更する(垂直方向には穿刺しやすい)。

→諦めて1週間後にして胆管拡張を待つ。

 

2.穿刺できたがワイヤーがすぐに跳ねてしまう

→透視画面で針の中を通るワイヤーをみつける。

→UNEVENで2本目のワイヤーを入れる。

 

3.デバイスが進まない

→潤滑剤をつける(エンドルブリなど)

→押しのテンションと引きのテンションをためす

→REN、先細カテーテルを使用する

→ランデブー法に切り替える

→Antegrade Stentingだけにする(bile rushによるAGS、膵炎が心配ならプラスチック)

 

4.食道穿刺になってしまった。

→プラスチックステントをいれる(gadelius:typeIT)

→ENBDを30cmくらいでハサミでカットして使う(保険適応外使用)

 

<合併症とその対策>

①疼痛:

胃痛があることがありPPI投与は必須。HGSで胃に穴を開けているので潰瘍対策は必要です。

②胆汁性腹膜炎

:腹水症例で多い印象。腹水が少量でもある症例は事前かあるいは直後には抗菌薬を入れておくことが大切です。穿刺回数が多くなると増えます。引き際は決めておきましょう。

③胆管炎を繰り返す症例

:HGSを抜去してPSに交換し、それを定期交換する。または通電ダイレーターでHGSのメタルステントの脇に小さな穴を複数あける。B2、B3根部にしっかり留置できている症例はあまりおこらない?

④antegrade法(AGS)に伴う膵炎:

膵癌以外の症例で入れるとリスクがあるため膵癌や胆管空調吻合部狭窄の症例ではアンテグレードは推奨されません。アンカバーステントをAGSで挿入してしまうと膵炎が起こっても基本的には抜けないので大変なことになります。

⑤ステントの迷入・逸脱

上記に記載したようにステントが腹腔内に迷入してしまった場合は緊急手術が必要です。胆汁が持続的に腹腔内に漏れ出しますので腹膜炎が必発です。手術ができない場合は基本的に経過観察するしかありません。もともと緊急手術ができないような方にHGSを行う時は、迷入した場合のリスクも十分説明しておきましょう。

腹水が高度であれば、腹腔内のスペースが広がるためステント迷入が起こりやすいため特に注意が必要です。

 

おまけ:Bile rush を用いたAGS (順行性ステンティング)

AGS:antegrade stentingの手順

1.EZshot319GでB3 or B2を胃内から穿刺

 (AGS単独なら食道近傍の穿刺でもできないことはない。ただし、縦隔炎に注意)

2.胆汁を確認し造影してXp撮影。M-throughまたはvisiglide2を挿入し留置する。

3.その後MTWで穿刺孔を拡張して遠位胆管を造影し、ガイドで乳頭を突破させる。 (MTW挿入時は鉗子キャップを付けておく)

4.Bile rushをantegradeに置く。

(進行膵癌以外の乳頭刺し留置や胆管空腸吻合の症例以外は膵炎のリスクがあるのでAntegradeは7Fr以下のプラスチックを使用を検討ください。)

5.REN4mm(REN挿入時は鉗子キャップを付けておく)で拡張して8mm or 10mmNitiS10cm のステントを挿入する。

6.HGSステントの最先端はB2、B3根部までいれる。

HGS+AGSのコツ:AGSにBile rush を使う!

AGS(順行性ステンティング)における最強のステントはBile rushです!

Bile rush selectiveは、先端5.7Frの超細径デリバリーシステムです。

HGSルートからのAGSにはとても役立ちます。

AGSを乳頭刺しで実施する場合は膵炎のリスクがあるため進行膵癌で膵実質が萎縮している症例や、肝門部胆管狭窄、リンパ節転移による中部胆管圧排、胆管空腸吻合部狭窄症例が良い適応となります。

 

まとめ

HGSはマスターすれば非常に患者さんのためになる手技です。しかし、知識が不足して大きな偶発症が起こってしまうと多くの人が不幸になります。

しっかりと専門施設で研修を積んで頂き、自施設でEUS-BDができる環境(複数科のサポート)を整えて、エキスパートの元で、適応を患者目線で考え複数科で話し合って、代替治療をしっかり説明した上で実施してください。

 

免責事項

本Websiteは教育を目的としたものであり、特定の症例に対して特定の手技・手法や保険適応外使用を推奨するものではありません。常に患者様の利益を第一に考えてください。そして、できるだけ複数のスタッフで相談しながら処置を進めてください。いかなる場合においても、 当サイトは一切の責任を負わないものとします。でも、EUSで困ったことがあればいつでも相談してください。LINEお待ちしています。

友だち追加

この記事は当初、HGSにチャレンジする人が増えて、事故が多発する可能性を懸念して限定公開にしていました。しかし、安全なEUS-HGSのコンセプトであったり、チャネル内リリースの概念、学会の提言など多くの方に知ってほしいことを中心に書いており、広くみてもらうことの方が大切ではないかと思い公開しました。このページが多くの医療者、患者様のお役にたてることを願っております。

 

あわせて読みたい HGSの参考書

1.胆膵内視鏡の診断・治療の基本手技 第3版: 
言うまでもありませんが、我々のバイブルです。MovieつきでEUS-BDが解説されています。もっていないとやばい一冊。

2. 胆膵EUSセミナー:
282−290ページに肱岡先生によるHGSの解説があります。9ページHGSでとっているのはもっとも多いかもしれません。

 

 

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世界一やさしいコンベックスEUSの教科書 note版

 

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執筆者:


  1. […] shunさんの記事や動画、 HGSのコツと実際:チャネル内リリースで安全なHGSをマスターしよう […]

  2. H.S. より:

    京都府内の病院に勤めている消化器内科医です。
    先生の記事を読み、先日当院初のEUS-HGSに成功しました。
    本当にありがとうございます。今後も勉強させていただきます。

    • しゅん より:

      コメントありがとうございます!そう言ってもらえると非常に嬉しいです!!今後ともeus channelを何卒宜しくお願い申し上げます。

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