【胆膵日常診療】敗血症ガイドライン2020にリコモジュリン が記載されました!

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しゅん

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こんにちは!「EUS channel」のブログ運営者のしゅんと申します。 O型で趣味はEUSです。某EUS・ERCP high volume centerに勤めています。

EUSが好きすぎてこのサイトを作りましたが、もともとは白黒画像のEUSになんて全く興味はありませんでした。しかしEUSを実施するにつれて、早期膵癌の発見、ソナゾイド造影の美しさ、EUSガイド下ドレナージの患者満足度の高さを知るうちにどっぷりつかってしまい、自分自身にとって無くてはならない手技・存在になっていました。また、多くの膵がんの患者様を診療する中で、早期発見のためのEUSの大切さを実感するようになりましたが、全国でのEUS普及率はまだまだ低い状況であることもわかってきました。私の目標はこのサイトを通じてEUSを世の中へもっと普及させることで、日本全国の膵がん患者の予後改善に寄与することです。駄文ですが読んでいただければ幸いです。

【胆膵日常診療】敗血症性DICに対するリコモジュリンについて

リコンビナントトロンボモジュリン(rTM)=商品名:リコモジュリンが

敗血症ガイドライン2020で初めて

「敗血症DIC患者に対してリコンビナントトロンボモジュリン製剤を
使用することを弱く推奨する」

という文言で記載されました!!

3つのRCTから死亡と出血のアウトカムのバランスが検討されました。
その結果

敗血症性DIC患者さんにrTMを使用することで
1000人あたり41人の死亡減少に対して
1000人あたり12人の出血性合併症増加
がありました。

この結果から、少なくとも出血と死亡のアウトカムの価値を無視しても29人の利益があり、
アウトカムの価値はもちろん一般的に、死亡>出血ですから
rTMを投与することの有益性はあるだろうと判断されました。

敗血症ガイドライン2020本編 ver.2.2.0 から引用

重症急性膵炎に対するrTM使用について

僕はrTMを重症膵炎の患者さんで良く使っています。

なぜなら、

①マウスの重症急性膵炎モデルでの有効性が示されており、
(Matsumoto M et al Pancreas 2020 Efficacy of Recombinant Human-Soluble Thrombomodulin for Severe Acute Pancreatitis in a Rat Experimental Model

②WON形成を予防する可能性がある(Eguchi T et al  Pancreatology2015  Efficacy of recombinant human soluble thrombomodulin in preventing walled-off necrosis in severe acute pancreatitis patients
などの膵炎に対して有益な報告があるからです。

 

ただし、rTMを使用するためにはDICの確定診断が必要であり、

急性期DICの診断基準を満たす必要があります。

 

DICの診断基準は、急性期DIC診断基準を用いることが多い

ここでDICの診断基準は複数あるためどれを採用するかという問題があります。
厚生労働省のDIC判定基準、急性期DIC診断基準、日本止血学会の基準、国際血栓止血学会のISTH overt-DIC診断基準
の4つがあります。

この4つのうち

敗血症ガイドライン2020では、
急性期DIC診断基準(日本で最もよく使われている)、
国際血栓止血学会のISTH overt-DIC診断基準(海外で最も使われている)
を目的に応じて使いわけるとの文言が記載されおります。

結局、DIC診断基準は、現在日本で最も普及している急性期DIC診断基準を日常診療でつかっておけば問題なさそうです。

 

この急性期DIC診断基準にはSIRSの項目が入っているのが大きな特徴で、
その他すべての基準よりも早期にDICを診断できる可能性があります

 

急性期DIC診断基準:合計スコア点以上でDICと診断する。

+1点 SIRS 3項目以上 Plt8−12万 Pltが30%減少/日 FDP10−25(μg/ml) PT−INR>1.2
+3点   Plt<8万 Pltが50%減少/日 FDP>25(μg/ml)  

SIRS:
⚫体温>38度あるいは<36度
⚫HR(脈拍数)>90
⚫RR(呼吸数)>20回/分あるいはPaCO2<32mmHg
⚫WBC>12000あるいは<4000

この急性期DIC診断基準を重症膵炎患者さんにきっちり満たしてあげることが重要なのですが、

スムーズにあなたの膵炎をDICと診断し、rTMを投与するにはコツがあります。

重症膵炎でもれなくrTMを使うための戦略

1. 膵炎のONSETからこまめにFDPを測定する。
2.看護師様に呼吸数をきちんととってもらう。

この2つがDIC確定診断には重要だとおもいます。

1. 膵炎のONSETからこまめにFDPを測定する。

これに関しては、急性期DICのスコアをみているとわかるのですが、

ポイントは+3点のFDP>25Plt8万未満です。
多くのDICと確定した症例を振り返るとFDPかPltで+3点、あとなにかで+1点でDIC診断となります。

血小板を採血検査に入れていないケースはあまりないと思いますので
このPlt8万未満は採血結果をきちんとみていればあまり見逃されません。

しかし、FDPを測定していないパターンはありえます。

みなさま、FDPはかられてますか?

 

重症膵炎の多くはこのFDPが早期に上昇するケースが多いです。
胆管炎の症例などは血小板減少が先行することもありますが、胆石性以外の誘引であればほぼ、FDPがまず上昇します。
ここをきっちりとらえてあげることで早期にDIC診断を行い、重症膵炎にリコモジュリンを開始するのが私のストラテジーです。

2.看護師様に呼吸回数をきちんととってもらう。

もうひとつのポイントは呼吸数です。

急性期DICスコアはSIRSをみることで、早期にDICを診断できるすぐれた診断基準ですが

ひとつ問題がございます。

「SIRSの4項目中3項目達成するのが非常に難しいのです。」

白血球数はだいたいいけるのですが、それ以外がまちまちです。

特に呼吸回数は事前に

看護師様に指示をきっちりしなければとられていないことすらあります(T_T)

 

ということで膵炎入院時の指示には「Vital測定時には呼吸数測定お願いします」と記載することが重要です。

このSIRS3項目の+1点があるかないかでDICと診断できるかどうかというケースは実際結構多いのです。

さらに、SIRS3項目+1点をきっちりとれるようになるともう一つのメリットがあります。

 

それは超急性期のDIC(SIRS+1、Plt+1、FDP+1、PT-INR+1)の+1点x4のパターンを診断できるのです。
これはあまり症例数多くはありませんが、+3点のFDPやPltで診断した場合と比較して
凝固系が大きく悪化する前に診断できており、患者様にとってメリットがあります。

まとめ

敗血症ガイドラインの改訂により、
敗血症性DIC性だけでなく重症急性膵炎においてもrTMが大きな役割を果たす可能性があります。
FDPの頻回な測定、呼吸数の指示が重要です!

急性期DIC診断基準やqSOFAの計算ツールも旭化成からでていますので是非使ってみてくださいね!

https://www.recomodulin.com/utility-tools/(計算ツールのリンク)

携帯のホーム画面に追加するとアプリのように使用できてより有用です。

 

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