目次
目次
急性胆嚢炎に対する EUS-GBD ~処置のコツと将来展望~
M田先生にEUS-GBDについて語っていただきます!EUS−GBDにかける思いが凄くて激アツの内容となっております。
EUS-GBDの極意を一言でいうと「胆嚢を動かさない」ということが大切になります。
極意の意味と今後のEUS−GBDの展望についてお話していきます。
急性胆のう炎に対するEUS-GBD
急性胆嚢炎では、重症度別、急性期・慢性期により治療方針は異なりますが、基本的には最終的に胆嚢摘出術を行うことが推奨されています。
しかしながら、日常診療においては年齢や基礎疾患により耐術ではない症例に遭遇することがあります。
そのような症例においては、標準的ドレナージとして経皮経肝胆嚢ドレナージ術(PTGBD)が東京ガイドライン(TG18)では推奨されています。
しかしながら、PTGBDは外瘻状態が続くというデメリットが存在し、
そのような症例においてはガイドラインにおいて内視鏡的ドレナージ術(ETGBDやEUS-GBD)を考慮しても良いとされています。
EUS-GBDとは、シェーマに示すように経十二指腸的(困難な場合には経胃的)に胆嚢を穿刺し、ドレナージを行う手技です。
今回、EUS-GBDにおける処置のコツや、将来的な展望について述べていきたいと思います。
EUS-GBDの使用機器
EUS-GBDで使用する主な機器です。
穿刺においては穿刺性の良いEZshot3(Olympus)が良いです。
穿刺孔の拡張デバイスは、他のインターベンションEUSではバルーンダイレーター等が頻用されていますが、EUS-GBDにおいては
通電ダイレーターであるCyst-Gastro-Set(Century medical)が適しています。
ガイドワイヤーはなんでも問題ないですが、Endoselectorがエコーの視認性がよくおすすめです。
EUS-GBDのステント
EUS-GBDにおける現状での主な使用ステントは基本的には金属ステントを使っており、
Niti-S Stype(Century medical)か、M-intraductal(メディコスヒラタ)を使用します。
プラスチックステントは胆汁の漏れが制御できないので基本的にM田は使用しません。
逸脱予防のアンカリング目的であれば使うことはあります。
ステントの選択においては、長期的な治療戦略を決めたうえで決定する必要があります。
具体的には、長期的に永久留置を継続するか、
抜去を目指すかを決めたうえで選択します。
EUS-GBD処置のコツ① 〜穿刺〜
EUS-GBDの処置のコツについて説明していきます。まずは穿刺です。
最も重要なことは、穿刺位置の決定です。
穿刺位置としては胆嚢頚部近傍での穿刺が
最も良い穿刺位置となります。
逆に、胆嚢底部での穿刺は最も悪い穿刺位置となります。
理想的なEUS-GBDの穿刺位置とは?
良くない穿刺位置とは?
胆嚢描出のコツ
胆嚢頚部で穿刺するには、Shun先生のEUSスクリーニング法(Chasing Method)を手本にしてください。
総胆管から胆嚢管を描出し、さらにスコープを回転させて出てくる最初の画面が胆嚢頚部です。
→球部操作の解説
胆嚢描出のピットフォール
くれぐれも、胆嚢がたまたま描出された位置では穿刺しないでください。EUSで見やすいなと感じる場所は、だいたい胆嚢体部から底部です。
EUS-GBD処置のコツ②ガイドワイヤー留置
一方時計回転だとどうでしょうか?
時計回転のワイヤー留置だと処置具の挿入などの影響を受け、
胆嚢が移動しやすくなってしまいます。
ガイドワイヤー反時計回転留置のコツ
ガイドワイヤーを反時計回転に留置すると、
その後の処置時に処置具の押しテンションが加わっても
胆嚢が移動しにくく処置が安定します。
反時計回転でガイドワイヤー留置するためには、
処置のコツ①での胆嚢頚部を穿刺することが重要ですが、
さらに鉗子起上装置を上げることで反時計回転で留置出来る
可能性が高まります。
ガイド留置のピットフォール
反時計回転でのガイドワイヤー留置にこだわりすぎて、穿刺針のままガイドワイヤーで探り直すようなことはしないでください。ワイヤーが破損して胆嚢内に迷入してしまうリスクがあります。あくまでも穿刺針からガイドワイヤーを出すときは引いて探り直してはいけません。
EUS-GBD 処置のコツ③穿刺孔の拡張
穿刺孔拡張のコツ
穿刺孔拡張時はどうしても胆嚢に対して押しのテンションが加わります。通電ダイレーターは穿刺孔拡張力に優れるため、必要最小限の押しのテンションで十分な穿刺孔の拡張が行うことができます。
穿刺孔拡張のピットフォール
通電ダイレーターにもラインナップが様々ありますが、他のインターベンションEUSとEUS-GBDでは考え方を変える必要があります。
EUS-GBDではガイドワイヤーは弧を描いて留置されているため、弧に添って先進しやすいもの(つまり、ワイヤーの引きのテンションに追従しやすいもの)を選択すると良いです。
具体的には柔らかいデバイスを選択するべきです。
他のインターベンションEUSではガイドワイヤーがまっすぐ留置されていることが多く、
穿刺孔拡張器具は細く、硬いものが好まれますが、
EUS-GBDではガイドワイヤーが
弧を描いて留置されているため、
使用デバイスは細く、柔らかいものを選択してください。
EUS-GBD 処置のコツ④〜処置具の柔らかさの重要性〜
よって、処置具(穿刺孔拡張器具、金属ステント)は柔らかいものがおすすめなんです。
Fine 025よりも、Cystgastrosetがおすすめです。
10mmよりも8mm径のステントの方がマウントされたステントの密度が低いためしなやかさがあります。
実際に自分の手で処置具の柔らかさは確認しておくのが良いです
ちなみに、処置具挿入時のガイドワイヤーは
処置具を追従させやすくするためには硬いもの(Endoselectorなどコシのあるもの)が
望ましいです。
処置具の挿入に難渋した場合などは、もっと硬いワイヤーに変更することがあります。
(Revowave hard type 0.035など)
具体的な柔らかいEUS-GBDのためのデバイス
しかし、EUS-GBDはカーブを描きながらデバイスを胆嚢ちゃんに留置する、というところが他と違うのですよね。
EUS-GBDのデバイスにはしなやかさを求めます。
EUS-GBD 処置の実際
EUSーGBDにおける理想のEUS画像と透視画像は
理想のEUS画面は、このように胆嚢頚部が描出されている状況です。
ワイヤーが底部へと行くように意識して穿刺すると、
反時計回転のワイヤー留置になりやすいです。
一方理想の透視画像はどうでしょうか?
反時計回転留置となると胆嚢の動きが制限され、
胆嚢を動かさずにステントを留置できます。
もし、体部や底部で穿刺してしまうと
ガイドワイヤー誘導(時計→反時計)のトラブルシューティング
時計回転になってしまい、穿刺孔拡張後に反時計回転を狙うときのストラテジーとしては
①通電ダイレーターでの穿刺孔拡張後にそのまま通電ダイレーターで探り直します。
②それでも困難ならば、Unevenカテーテル(PIOLAX)や、スイングチップカテーテル(Olympus)で探り直します。
それでも誘導が困難であれば、、、
EUS-GBD 目的に合わせたステント選択の実際
ステントの選択においては、長期的な治療戦略を決めたうえで決定する必要があります。
具体的には、長期的に永久留置を継続するか、
抜去を目指すかを決めたうえで選択します。
M田がEUS-GBDのステントに求めるポイントは、
①胆嚢から逸脱しにくい!
胆嚢内に何cm留置するのか?
Niti-Sならばuncover partが8mmあることを考慮して合計3cm程度は入れたいです。
M-intraductalも7cmのものであれば25mmのフレアパートなので、3cmくらいは入れたいです。
②抜去したいときに抜去できる!
どちらのステントがいいの?
抜去を目指すならM-intraductalですが、
胆嚢が動きそうであったり安全性を重視するならNiti-Sでしょう。
③食物残渣が胆嚢に入りにくい!
ステント長の選択は?
Niti-S Stypeであれば10cmを、(長くてこまることはあまりないです)
M-intraductalであれば最長の7cmをM田は使用しています。
ステント径の選択は?
Niti-S Stypeであれば8mmです。10mmだとしなやかさが足りません。
M-intraductalであれば中心径6mm両端径8mmのステントです。
それぞれのステントのデリバリーは変わりませんが
内径が細い方が、上でのべたようにデバイスの密度が低いためしなやかに入っていきます。
胆嚢の中で弧を描きながら押していきやすいのです!
EUS-GBDに使用するステントの今後の展望
Hot AXIOS Systemの特徴は?
M田が考える長期留置を目指すためのEUS-GBDステント
ここからは僕の考える胆嚢手術までは望まないような基礎疾患のある高齢者に適したステントの提案で、
こんなステントがあったらいいなと思っています。
この???ステントの特徴は、
EUS-GBD処置の極意
・胆嚢を動かさないこと
・頚部穿刺
・反時計回転のワイヤー留置
・カーブでも挿入できるしなやかなデバイスを使う
おわりに
急性胆嚢炎に対するEUS-GBDは高齢者や基礎疾患により耐術困難な症例において
非常に有効なドレナージ治療です。
しかしながら、現在のところ保険収載はされておらず
専用デバイスの開発も十分ではないため、容易な処置とはいえません。
今後のEUS-GBDの発展に向けて、本稿が皆さんのEUS-GBD処置における
一助になれば幸いです。
将来的にはEUS-GBDが高齢者や基礎疾患のある症例だけではなく、
急性胆嚢炎に対する胆嚢摘出術に変わる標準治療になることを期待しています。
by M田
世界一やさしいEUSの教科書 目次|コンベックス型超音波内視鏡(EUS)のはじめ方から奥義まで
2 件のコメント
はじめまして。胆膵専門で診療を行っているOと申します。自分もEUS-GBDが胆嚢炎治療の中心になってくるのではと考えており、日々悩みながらEUS-GBDを行っています。M田先生のテクニックを惜しげもなく公開されていてびっくりしてついコメントさせて頂きました。共感できる部分と勉強になる部分と、一方でM田先生でも怖い思いをされているのだと思いながら興味深く拝見させていただきました。第二弾も期待しています。Shun先生の熱意にはいつも感心しながら拝見させて頂いています。今後の連載も楽しみにしています。
O様
M田です。
コメント頂きありがとうございます。
EUSGBDは奥が深い処置ですよね。
これからどんどんいいデバイスが開発されて、スタンダードな治療になっていくことを私も願っています。
またshun先生とコラボして何か記事を書く機会があればありがたいと思っています。
どうぞよろしくお願い致します。