コンベックス型超音波内視鏡(EUS)トレーニング法 ・描出のコツ:記事一覧
目次
EUS概念図
概念図は、実際の解剖とは異なりますが、EUSを実施しているときに見えている管腔をイメージしやすいように書いたものです。EUSの地図のようなものとお考えいただければと思います。特に球部の概念図は、実際の解剖と描出イメージの違いをなかなか理解しにくいこともあるため有用です。
人により各臓器の位置は微妙に異なるため、腸管内からどこにあててどう腸管外が見えるかということよりも管腔どうしの繋がりが大切だと思っています。
ただそこにある管腔を丁寧に追いかけて次の管腔を探していくことがコンベックスEUSのスクリーニングの極意です。
胃内操作の概念図
胃内操作では、門脈は必ず主膵管と交差するということが描出のポイントになります。体尾部では、頭部方向に向かうためにはスコープを左回転(Left turn)、尾部方向に向かう時は右回転(Right turn)します。最尾側に近づくほど膵臓がプローブから離れていくので膵尾部では、アップアングルが必要となります。
また、門脈よりも頭部の操作に関しては、体部とは逆に右回転が必要となります。頭部でも尾部と同様に、スコープから膵臓が離れていくように見えますから、アップアングルが必要です。門脈より頭部が見たければ、右回転+アップアングル+スコープpushしてください。小柄な患者様の場合などは乳頭までみえることもあります。球部、下行部は潰瘍(瘢痕)や腫瘍などの状況により、描出の難易度や危険度が上がることもあり、ここで乳頭まで見ておくことがリスクマネジメントにもなります。
もっと詳しく見たい方>>胃内操作の解説はこちら
球部操作の概念図
おそらく概念図が最も効果を発揮する領域は、この球部操作です。
球部では「解剖がどうなっているのか?、臓器との位置関係がなかなイメージし辛い」という意見をよくいただきます。
しかし、臓器との位置関係はイメージする必要はありません。この概念図のように臓器が存在し、脈管が走行していることをわかっていただければ良いです。
さて実際の操作ですが、球部は門脈、胆管、胆嚢、膵管という4つの脈管が接しています。そのためどれか一つのメルクマール(目印)をみつければ連続してすべて描出できます。
門脈は肝門部で、胆管と接していますし、膵管も胆管と乳頭部で接しています。胆嚢は胆管をみていく過程にある胆嚢管から分岐します。
実際の描出ですが、門脈をなんとかみつけるのが最も初心者の導入方法では良いと思います。
門脈は球部の空気を抜いて前上壁でアップアングルしてゆっくり右回転で描出されます。
その後門脈がしっかりみえれば、右回転をすると100%胆管がでます。
この概念図では胆管を中心に記載されていますが、中部胆管で右回転+アップで乳頭部が観察でき、乳頭部から左回転で、膵管が体部方向に走行してくのが見えます。肝門部の観察は、中部胆管から左回転+ダウンアングルで観察できます。
このダウンアングルが胃内操作では不要なことが多いため、なれないうちは難しいことが多いです。しっかりダウンできていないがゆえに胆管を潰してしまって見失ってしまうことが特に最初は多いと思いますが、空気が入らないギリギリまでダウンするミリ単位のダウンアングルが重要です。
胆嚢描出は人により胆嚢の位置が異なるため、球部では最難関となります。理想的には胆嚢管を出せればいいですが、出ないこともあります。そのため、胆嚢の描出方法について100人程度調べました。その結果、胆嚢管の位置によらず胆嚢描出は肝門部で左回転すると8割の方で描出されることがわかりました。残り2割は右回転で出ますが、一般的には左回転と覚えておけば良いと思います。
もっと詳しく見たい方>>球部操作の解説はこちら
下行部操作の概念図
下行部も初学者にとっては難しいですが、大きくは二通り描出する方法があります。
①しっかり乳頭の位置を内視鏡画面で確認して直接プローブをあてる方法(プローブと画面の不一致は忘れずに!)
②乳頭が確認できない時はSMV、SMAを目印にして左回転して描出する方法(SMVとSMAはお箸のように2本並んでいるのでchopstick methodと呼んでいます)。
①しっかり乳頭の位置を確認して直接プローブをあてる方法から解説します。
これが最も簡単ですが、落とし穴があります。プローブの先端位置とカメラの位置が異なるために、乳頭に画面でピタッとあたった用に見えても実際はそこから約1-2cm程度は引いたところで初めて乳頭部にプローブが当たるため画面で当てるだけでは胆管と膵管は見えません。少し引く必要があるということを覚えておきましょう。総胆管は乳頭にプローブを当ててから左回転した方向に見えますが、これはERCPと同様です。胆管軸は乳頭口側隆起を0時とすると、11時方向であることが多いため、総胆管は少し左に傾けると描出されやすいというのはERCPをされる方であれば理解しやすいかもしれません。また、同様の考え方で胆管から右回転していくと膵管は描出されます。
②SMV、SMAを目印にして左回転して描出する方法(chopstick method)
膵鉤部は下行部へとスコープを勧めた後に、ある程度ストレッチして右回転していくとエコー画面右側から白い膵鉤部がでてきます。この鉤部がきれいにでるように圧着を調整しながらスコープを引いていき画面内の1/4~半分くらいを膵鉤部が占めるくらいまで引きます。
膵鉤部が充分に描出できたら少しずつ左回転していくと、SMV,SMAが並走しているのが見えます。これがお箸のように見えるのでメルクマールとしては理解しやすいためchopstick methodは有用です。
2本のお箸を見つけたらさらに左回転すると黒い乳頭部が見えてきます。鉤部よりも頭部は黒いことが多いため、乳頭部の胆管と膵管を探す時は膵実質が黒くなるところを探すと良いです。(腹側膵と背側膵の違いに起因する色の違いです)
もっと詳しく見たい方>>下行部操作の解説とコンベックスEUSの極意もご参考にしてください
まとめ
EUS概念図を用いることで、EUSの脳内地図を構築しましょう。
>>世界一やさしいコンベックスEUSの教科書にも内容をまとめております。
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