コンベックス型超音波内視鏡(EUS)トレーニング法 ・描出のコツ:記事一覧
目次
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各パートの描出の解説(球部操作)
球部はトレーニーを最も悩ませる領域です。
よく頂く質問は、
①そもそも幽門輪にスコープが入らない
②門脈や胆管、膵管が描出できない
③解剖がよくわからない
④胆嚢を描出できない
⑤胆管をすぐに見失ってしまう
というものが多いです。実際に球部を操作する順に解説していきましょう。
幽門への挿入
ある施設で球部への挿入だけで穿孔した症例もあるとのことで慎重に行う必要があります。
コンベックスは前方斜視であり、プローブの先端の位置は内視鏡画面の下側になります。よって、幽門は内視鏡画面の下枠すれすれ付近にもっていくと挿入しやすいです。
しかし、挿入困難な時などは、絶対に力でいれてはいけません。プローブより手前にカメラが付いているというコンベックスの特徴をもう一度思い出しましょう。内視鏡画面で体感するイメージとスコープ最先進部はずれがあります。
挿入が難しい症例はエコー画面で幽門を描出してエコーで軸を合わせて挿入する方法も安全かつ有用です。
球部のメルクマールの見つけ方 (門脈・胆管・胆嚢・膵管)
球部走査は、描出最難関ではありますが、基本どおりフォローするメルクマールを6時にキープし、絶対に逃さないことが重要です。メルクマールは門脈、胆嚢、総胆管、膵管の4個です。これらのうちどれかひとつでも見つけることができれば、すべての脈管は追うことができます。門脈は肝門部にフォローすれば総胆管と併走していますし、総胆管は胆嚢管で胆嚢と、膵管は乳頭部で胆管と概念図の通り連続しています。
門脈の描出方法
最初のメルクマールである門脈の描出方法について説明します。
パターン①幽門に挿入して球部全体を観察して、カメラをニュートラルに戻す。軽いj型になるように調整する。その後球部前上壁に押し当ててゆっくり右回転したら門脈がでる。(M法:考案者はM先生です。)
パターン②幽門に挿入する際にゆっくりとエコー画面を見ながら進める。多くの人が幽門への挿入に夢中になり内視鏡画面を注視しているため、挿入の過程で複数のメルクマールが見えているのに、無視しがちです。もし、みつからなければしっかり空気をぬいてゆっくりプローブを幽門から抜ける直前まで引き、エコー画面をみながら再挿入しましょう。この時内視鏡画面は一切見ずにエコー画面にのみ注目してゆっくりいれましょう。(内視鏡画面は見なくても大丈夫です。どうせ赤玉ですし、エコー画面で穿孔しそうならプローブが壁を押している像が見えます。)
スコープを幽門に入れて球部の前壁に向かって進めていく過程でどれかひとつくらいは、メルクマールが見つかることが多いです。
球部の基本操作 20カット⑫-⑮
門脈(⑫)が見つかると、右回転していくとほぼ100%総胆管が見えますので、胆管を6時に持って来ます。中部胆管(⑭)からアップと右回転で膵頭部(⑬)、ダウンと左回転で肝門部(⑮)が描出できます。
5%程度逆の操作になる人もいますが、基本的にはこの操作で対応できるはずです。
胆嚢の描出 20カット⑯⑰
また、胆嚢は関門部付近で胆嚢管が見えたら左回転してプローブを引いていくと胆嚢頚部(⑯)が描出されます。スコープをどんどん胃内方向へ引いていき底部(⑰)まで追っていきます。底部を観察するときはプローブが球部から胃内は抜けてしまうことが多いので抜けてしまった場合はまた丁寧に再挿入してください。
胆嚢は肝門部で左回転すると約80%みえますが、残り20%は右回転ですから出ない場合は左右にスコープを振って見て確認しましょう。
膵管を膵体部方向へ 20カット⑱
最後に、膵頭部で膵管を6時に乗り換えて右回転していくと、膵体部方向へ膵管が追えます(⑱)。
描出のコツ:胃内で膵体部は見えていますがここの膵体部のviewは、門脈と膵管の位置関係が直線的に非常に美しく出るため、小さな膵内分泌腫瘍などを外科に提示する際に、腫瘍の局在や膵管との距離などを明確に示すことができます。
胆管を見失わずに描出する方法
ここでの操作は胃内操作と異なりアップアングルでの圧着だけでなくダウンが重要となります。肝門部方向に胆管を追う時にダウンをしっかりかけないと、容易に胆管は潰れてしまいます。本当に微細なミリ単位の操作が要求されるために、胃内よりも球部の描出はどうしてもハードルが高くなります。重要なポイントは胃内と同様にCHASING METHODの基本に忠実に、①6時に正確に目的の管腔をキープし、②アップアングル、ダウンアングル、スコープのプッシュ、プル、吸引や送水、バルーンなどを駆使して丁寧に圧着し、③それらができるようにゆっくり動かすことです。
描出のコツ:また胆管、膵管や胆嚢が蛇行していることもよくあり、途中まで右回転であるが途中から左回転ということもよくあります。シェイク(右手で90度程度左右に動かす)を有効につかってどちらに展開するか予測することが有用であることが多いです。
まとめ
球部操作は、幽門輪は慎重に挿入し、直視で挿入がむずかしければエコー画面もみる。球部ではまず門脈を描出し、右回転することで総胆管を出す。その後肝門部、乳頭部をくまなく観察する。胆嚢は描出が困難であればとりあえず肝門部で左回転してスコープを引いてみると出ることが多いです。
上記内容はもっと詳しく⇩にまとめております。