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EUS下嚢胞ドレナージ(EUS-CD)のコツと落とし穴、EUSインターベンションに共通する極意

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EUS-CD:EUSガイド下嚢胞ドレナージ

超音波瘻孔形成術の一つ、EUS-CD(eus-guided cyst drainage)は、EUSインターベンションの中で最も実施され普及している処置です。EUS-FNAよりも穿刺対象として大きく穿刺は容易そうにみえます。一見簡単そうに見える処置ですが、いろいろと工夫すべきところや落とし穴があるんです。当院で実施しているEUS-CDの工夫について述べたいと思います。

EUS-CDは全てのEUSインターベンションの第一歩となる処置であり、これをきっちりマスターすることが他のインターベンションの基礎となります。

EUS-CDの対象

EUS-CDの対象ですが、改定アトランタ分類を参照して4週以上経過した、感染のある被包化壊死(WON)や仮性嚢胞が対象となります。

4週未満の症例は、のう胞の隔壁が不安定でありガイドワイヤーが容易に隔壁を穿通してしまいます。穿通してしまうとのう胞(あるいはWON)の中の適切な位置にステントを留置することが困難となります。なるべく4週待つことが重要ですが、4週未満でも感染により炎症所見が高度であればEUS-CDを実施することはあります。

逆に4週よりも時間が立ちすぎるとWONの場合は、膿瘍が固形化してしまいドレナージが困難な場合はあります。この時は炎症所見が陰性で感染徴候がなければ経過観察としますが、感染源となっていることが予測される場合は経鼻チューブなどを挿入して生食による洗浄も実施を検討するか外科的ネクロセクトミーあるいはEUSガイド下ネクロセクトミーを検討する必要があります。

使用デバイス プラスチックステント内外瘻の場合

1. 穿刺針 おすすめ:EZshot319G

のう胞(WON)の壁が炎症で硬いこともありEUS-CDでは穿刺針の鋭さが最も求められるところです。個人的には穿刺性能、形状記憶による耐久性なども考慮すると現時点ではインターベンションにおいて最もこの穿刺針がすぐれていると思います。先端の形状はメンギーニ形状をとっており非常Visiglideに鋭利になっております。19Gを使用しないといけない理由は、22Gでは0.025inchのワイヤーが針の中を通らないからです。

2. ガイドワイヤー おすすめ:Visiglide2とRevowave2

初回穿刺時に挿入するワイヤーは柔らかい0.025inchのものであればなんでも良いです。のう胞を穿通させずにループを形成させることを考えるとVisiGlide 2(Olympus)が使いやすいです。4週未満の急性壊死性貯留(ANC)で壁が薄い場合は先端荷重が弱いM-THROUGHを使うこともあります。1本目のワイヤーで基本的にpigtailを挿入します。

内外瘻を基本とする場合は2本目のワイヤーは、コシが強いワイヤーを選択することがポイントです。Revowave2(piolax)やそしてワイヤーの色は1本目と異なるものが良いと思います。先端は同様にアングルタイプがのう胞への留置には良いと思います。

2本目にコシが強いワイヤーを選択する理由は2つあり、

①脇から2本目として経鼻チューブを挿入する場合、pigtailステントと接触するため抵抗が生じることがある。

②1本目のpigtailをリリースする時に、内視鏡が穿刺部から距離が離れてしまう(リカバリーはコシがある方が良い)

また、2本目のガイドワイヤーの挿入方法はUNEVENを使用するか、10Frのソーヘンドラダイレーター(内腔が大きく、0.025の脇から0.035inchのワイヤーの2本が挿入可能)がおすすめです。

3. のう胞壁の拡張(dilation)   おすすめ:REN 6mm

のう胞壁の拡張は、圧倒的にREN 6mm(kaneka)が有用です。RENは非常に魅力的なデバイスで、まず他社品と比較してテーパーが素晴らしいです。バルーンの先端が約3.3Frになっており19G穿刺針との段差もほぼありません。

19Gの針は1.07mmであり、3.21Frとなります。穿刺針がはいればほぼ間違いなく、このデバイスは通過可能です。さらに素晴らしいポイントは、従来のバルーンダイレーターはバルーンにただシースを付けたもので突破力が不足していましたが、RENはダイレーターにバルーンを載せているような構造になっています。すなわち、ソーヘンドラにバルーンを付けた!というようなイメージです。

次のポイントはバルーンの直径です。なぜ6mmのバルーンを選択するかというと、6mm(直径)=18Fr(円周の長さ)という単位の計算を根拠にしています。

プラスチックステントの内外瘻の最終形として、通常であればFr(直径2.3mm)pigtail7.5Fr(直径2.5mm)pigtailを挿入したいしたいです。よって、5mmのバルーンであればぎりぎりでやや不足。大きすぎると出血などのリスクもあり、バルーンサイズの選択は6mmがベストであると私は考えています。

通電ダイレーターも賛否ありますが、こちらに関しては出血のリスクがありどうしても壁が硬くて突破できない時の最終手段として使用することがあります。多数の論文で通電ダイレーターの偶発症としての出血が報告されており、介在血管に関しては注意が必要です。

4.内瘻(ろう)ステント おすすめ:スルーパス7Fr(穿刺部で長さを決定)

内瘻ステント:pigtailが有用です。引き戻し可能な、スルーパス(Gadelius)は有用です。スルーパスは7Frでも内腔が他社品と比較して大きく、10Frに相当するためドレナージ効果も高いと考えます。

pigtailステントでもう一つEUS-CDにおいて重要な要素は、pigtailの巻きです。Gadeliusの場合は片巻きで5cmとなっております。

メディコスヒラタ(mediglobe)のpigtailは、巻きが6.5cmとなっています。大きさは好みが別れますが、巻きが大きいとのう胞内への迷入が少ない可能性はあります。

長さに関しては長めにしておくと、のう胞内に入り込んでしまう迷入リスクは低くなりますが、体上部からのWONの穿刺のケースにおいてはステントが長すぎると食道リリースになる可能性があり、食物の通過障害の原因になりえます。穿刺が体上部になりそうであれば4cmなど短いものを利用しましょう。

金属ステント:HOT AXIOSや胆管用ステントの実際

ついに、ボストンからHOT AXIOSが保険適応になりました。非常に協力なドレナージ効果が見込める魅力的なデバイスですが、使うためにはボストンで講習をうけてライセンスを入手する必要があります。また、食物残渣の腹腔内への流出、ステントを抜くタイミング、留置後出血など課題は残っています。先進施設での症例集積待ちです。

通常の胆管用金属ステントに関して良性疾患である膵嚢胞には保険適応はありません。学会では報告がありますが、偶発症が起こってしまった場合は問題になる可能性があります。どうしても必要であると判断した際は十分に患者様に説明して外科のバックアップ体制も整えておいた方がよい可能性があります。

金属ステントは、胃内への留置であれば問題ないかもしれませんが、十二指腸に金属ステントで大きな瘻孔を作ってしまった場合は、胆汁や膵液が瘻孔外に持続的に漏れ続ける可能性があります。冷静に考えてみると、ERCPやEUSスコープで穿孔したのと同じ状況ですよね。

いずれにせよHOTAXISはライセンスが必要ですし、通常の金属ステントは大口径でドレナージ効果が高い可能性があるものの、保険適応外で状況によっては危険な偶発症を起こすこともあります。ハイボリュームセンターでの見学や研修で術前・術中・術後のポイントを学ぶことが患者様の安全において必要不可欠です。

5.外瘻ステント   おすすめ:経鼻チューブ7.5~8.5Fr

外瘻としては7.5Fr ENBDチューブを使用しております。通常の経鼻チューブであればなんでもよいと思います。ドレナージ効果をより高めたい場合はサイズアップも有用かもしれません。

EUS-CDの手順 チェックシート使ってみてください!

EUS-CDの手順チェックシートです。最近は、私はチームスタッフにこれを渡して手順の情報を共有してEUS-CDを行っています。

<EUS-CD手順チェックシート>

番号 EUS-CD手順チェックシート できたらチェック
すべての使用デバイスの準備・腹臥位でXp撮影  
嚢胞/WONの穿刺位置の決定(ステント留置部位・深部の評価)  
3 ドプラによる介在血管の評価  
4 19G針による呼吸およびガイドワイヤ誘導を意識した穿刺  
5 嚢胞内溶液の吸引・培養・細胞診  
6 嚢胞の造影  
7 0.025inchのガイドワイヤーの挿入  
8 REN 6mm挿入(鉗子孔キャップをRENに装着しておく)  
9 EUS画面の維持(透視画面のスコープのベストの形も撮影する)  
10 デバイス挿入時に透視画面の他者への確認を依頼する  
11 胃壁のdilationの実施(6mmまで1分くらい)  
12 UNEVEN挿入し2個目のガイドワイヤー挿入(色違い)  
13

嚢胞内ステント位置のシュミレーション:pig先端位置からステント中央までの距離の長さを測定する。

スルーパス:片巻き5cm、メディコスヒラタ:片巻き6.5cm

 
14 迷入と嚢胞外への逸脱を意識したステントリリース  
15 外瘻留置(経鼻チューブ)入らなければdilationの追加  

 

EUS-CD成功において最も重要なこと:EUSインターベンションの極意

EUS-CD成功において最も重要なポイントは、すべてのEUSインターベンションに共通しています。

最大のコツは、EUS画面の維持です。

穿刺後に留置したガイドワイヤーが見ている画面で周囲の臓器や脈管の走行、のう胞内の貯留物の模様(変化しないもの)などを覚えましょう。また左右の回転でどう回せば何がみえるのかということも確認しておくことが必要です。

また、ココがベストポジションと言うところで透視の写真を一枚とりましょう。透視の写真でみるとEUSプローブの微妙な傾きやスコープのポジションが理解できます。

①鎮静不良②余所見:デバイスの交換や透視画面に注目しすぎてEUS画面をみていない③デバイスの挿入困難でガイドがはねてしまう。④1本目のpigtailステントを留置した後などの状況では、どうしても穿刺部位からスコープは離れます。③や④に関しては大きく離れます。

EUS画面がずれてしまった時の対応:トラブルシューティング

EUS画面がずれてしまっても落ち着いて、ベストポジションの画像をアノテーションに出してもらうように透視の担当者に頼みましょう。ほとんどの場合はリカバリー可能です。余所見が必要な場合は透視の人や周りのスタッフに事前にEUS画面や透視画面を見ていてもらうように依頼することが大切です。

EUS画面の維持こそがあらゆるEUSインターベンションの成功のために最も重要な原則です。EUS-HGSEUS-CDSEUS-GBDEUS-PDなどにおいてもすべて同様です。

EUS-CDの落とし穴はステント留置迷入予防の極意とは?

EUS-CDの落とし穴とも言える最大の難所は、ステントの挿入とリリースです。

これはなかなか経験を積まないとわからないことなのですが、大きな仮性嚢胞の場合などはのう胞で胃が圧排されて内視鏡の視界が悪いことがあります。また、体上部の穿刺の症例では、食道リリースになりやすく狭い食道ではEUSスコープは前方斜視であるため視野が狭くなりpigtailの限界マーカーを見落とすことがあります。

限界マーカーを見落としてステントを挿入すると、ステントがのう胞の中に迷入(埋没)しています。迷入するとステントの回収は、かなり大変です。そもそも視野が悪かったから迷入したので回収時の視野もいいわけがないですよね。ステント迷入は、絶対に避けねばならない偶発症の一つです。

ステント迷入予防の極意

迷入予防の極意は透視画面でステントの中心を見極めることです。

ステントの中心を透視画面で把握するためには、自施設で使用するpigtailの巻きの長さを知っておく必要があります。上記のようにスルーパスであれば5cm、メディコスであれば6.5cmでしたね。pigtailステントはのう胞内へ挿入される時に真っ直ぐに引き伸ばされた状態で挿入されます。

上の図ではメディコスの6cmのステントの挿入例ですが、巻きとステントの中心までの距離が9.5cmです。すなわちここが6cmのメディコスのステントの中心となります。

スコープの先端から透視画面で9.5cm以上入ってしまうと、ステントが巻く力で、するっと一気に埋没してしまうかもしれないため進めてはいけません。ここでガイドを引いて(スルーパスではある程度インナーシースも引くこと)、ループが形成されればもう迷入は安心です。

ステント迷入予防のためには透視画面でステントの中心を計算し、pigtail部分を早めに作ることが大切です。

内視鏡画面での視野不良を透視画面で補うことがポイントです。

まとめ

EUS-CDのポイントは、チェックシートを活用して手順を共有すること。術者は、EUS画面をとにかく維持することが重要です。余所見が必要な時は他の人の目線もかりましょう。また、迷入予防のためにpigtailステントの中心を透視画面で把握することが役立ちます。

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