超音波内視鏡下ドレナージ

JDDW2023で実感したEUS-BD関連デバイスの進化について

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【JDDW2023で実感したEUS-BD関連デバイスの進化について】

 

まず、前提としてEUS-BDは19GのFNA針で穿刺し、 0.025inchのワイヤーを通し、
瘻孔を拡張し、ステントを留置するという手技であり、

 

それが常識であり、多くの報告はハイボリュームセンターからでした。

 

また、

①穿刺

②ワイヤー留置

③瘻孔の拡張

④ステント留置

この4つの問題がEUS-BDの難度を上げていましたが、 デバイスの進化により少しずつ処置の難度が下がってきました。

 

例えば、穿刺針は、柔らかくしなりより深い位置を穿刺できる穿刺性能の高い
Sonotip pro contorol(MEDICOS)、

ワイヤーは超音波の視認性が極めて高いエンドセレクター(BOSTON)、

瘻孔の拡張はREN(KANEKA)、

容易なステント留置を可能とするType IT stent through and pass

そして大きなニュースとしては
Niti-S(EUS-BD system)金属ステントが保険適応をとったということ。

 

さらに今回、いくつかのデバイスの進化と処置の普及があり、現状が変わってきています。

 

しゅん
しゅん
特に参考になる、私がすごく感動した演題をいくつかPICKしていきますね!

1.Tornusという非通電、高突破性デバイスの登場(0.018 inch、0.025の両者に対応)(参考演題:内W20-13 11/4 9:00-11:30)

Tornusが登場したことにより22GのEUS-HGSが大きく進歩しました。

具体的には③の瘻孔拡張という問題点を解決しただけではなく0.018 inchのデバイスにも対応することで、①穿刺を22Gで行いやすくなるという利点も生まれています。

一昨年かその前までは、22Gで穿刺、0.018inchのワイヤーの挿入までは可能でしたが、その後のダイレーションが難しかった。

0.018inch対応のデバイスはあるものの様々な問題で限定された施設からの処置の報告が多かったと思います。

 

しゅん
しゅん
正直なところ私自身も19Gの方がその後の造影やデバイスも豊富で最終的に使用したデバイスの数も少なく済み、コストの点からもあまり積極的に22Gの穿刺針を選択したいとは思っていませんでした。

ところが、今回はやや小規模の施設からのEUS-HGSの22G穿刺の有用性の報告がありました。全例22G、0.018inch、TornusあるいはESダイレーターで拡張するとのこと。

 

22G針を使用する最大のメリットは胆管穿刺であり、 小規模の施設でも穿刺難度を下げる役割がある。 22Gを使うとより深い部分の胆管が穿刺可能であり、19Gよりも簡単にHGSにおける理想的な穿刺ができる。(ある別の報告では、19Gでは約30度、22Gでは約40度針が立つという。この10度の違いが肝門方向へのワイヤー誘導において大きいようです。浅い角度で指すほどガイドワイヤーが末梢胆管方向に誘導されてしまいます。)

 

適切な胆管穿刺を行うことでその後の処置が容易となるため、
22G針の方が19G針よりも訓練施設では胆管穿刺がしやすく良いとのこと。
続く、拡張はTornus0.025で問題ない(0.018inch対応を使うと思ってました)、

 

瘻孔拡張後は、ワイヤーは安定のため0.025inchに交換して、
後は通常通りステントITステントを留置する。

 

実際、HGSでは穿刺が命であり、その穿刺部位により難易度が大きく変化します。

 

先進施設では経験値とFNAの精度、少し穿刺ラインが悪くともその後の引き出しでカバーしていたのが現状でしょう(Unevenとか、Moving scope technique、Liver impaction methodなど)。

 

現状は、22GセットのHGSについては、まだワイヤーを2本必要とするという問題点、
初回のガイドワイヤーが0.018inchでありやや不安定であるという問題点がありますが、

どうしてもEUS-HGSを行う必要があるという患者さんが世の中に存在することは事実であり、Tornusの登場はEUS-HGSにおいて強力なサポーターになったと思います。

 

2.Fujiの新スコープ 超音波内視鏡 EG-740UTの登場とARIETTAへの接続(展示ブース)

このスコープの登場は①穿刺と④ステント留置を改善しました。アップアングルがかかる角度が大きく変わっており穿刺できる胆管の選択肢が増えています。

特にB2穿刺がしやすくなるという点は、穿刺部位の選択肢が増えてとてもいいかもしれません。

ステントリリースの時に視野角が広くステントが視認しやすいのも有用です
(これが④のメリットです)。

 

このようにこのカメラはEUS-BDを強く後押しするために開発されたといっても過言ではありません。

またアップアングルがよくかかり正面が見やすくなったため、B-2など術後再建腸管でのFNAの有用性も報告している先生もいらっしゃいました。

 

さらに、ARIETTAがこのFUJIの最新のスコープにつながるようになったということで展示ブースでも紹介されていました!

 

FUJIのEUSはまだまだ画質で、Olympus のシステムの領域まで追いついていないという問題点がありましたが、これも既存の最上位機種と連携できるようになり解決。

 

問題点としてFUJIのトロリーが多くの施設の透視室に普及しているかというとそうでもないため、
この進化が訓練施設に普及するのはまだ先かもしれません。

 

来年以降FUJIのEUS-BDの成績が徐々に増えてくるのではないでしょうか。

3.シークマスター(PIOLAX)の可能性:EUS-GBD
(参考演題:W20-12 11/4 9:00-11:30)

これはみんなびっくりしたと思います。

19Gに0.035 inchのガイドワイヤーを通してEUS-GBDを行うという報告です。

19Gの穿刺針には、0.035 inchのワイヤーは通らないという常識があります。 OTAKUなので細かく調べたことがあるのですが、 0.035inchは0.89mmなので、19Gの穿刺針1.07mmの内腔には隙間がちいさすぎて入らないんですね。

でももし入れば、デバイスとの段差も小さくなりますし、デバイスの追従性は向上します。

 

実は、この発表のKey pointとなりますが、

しゅん
しゅん
PIOLAXのシークマスター(0.035 旧REVOWAVE)はなぜか19G針に通ってしまうんです。

実際0.035よりも細い0.032inch(詳細はメーカーに確認いただく必要があります)だったかと思います、間違ってたらすいません。

とにかく従来より太いガイドワイヤーが19G針に通ります。
選択性ややおちるかもしれませんが、 EUS-GBDならばターゲットは大きいので問題ありません。
そして拡張操作なしで穿刺後ステント留置するといった報告です。

拡張なしで金属ステントが入るならば有用ですね!

まとめ

  1. 22GEUS-HGSがTornus(Olympus)の登場でさらに追い風に
  2. EG-740UT(Fujifilm)+ARIETTA(Fujifilm)=最高!!!
  3. シークマスター(PIOLAX)+19G=拡張なしで突破!!
しゅん
しゅん
上記がJDDW2023の進化ですね。

この記事が明日からの診療に少しでもお役にたちますと幸いです。

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【Note】消化器内視鏡検査・周術期管理の標準化ハンドブック……河合 隆
【Note】小児消化器内視鏡ガイドライン……中山佳子
Ⅱ.食道
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 ●①胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021改訂第3版,②高齢者GERDガイドライン……栗林志行ほか
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Ⅲ.胃
 ●早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン……浅田裕也ほか
 ●①胃癌治療ガイドライン,②胃癌に対するESD/EMRガイドライン……諏訪哲也ほか
 ●①消化性潰瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版),②非静脈瘤性上部消化管出血における内視鏡診療ガイドライン,③高齢者胃潰瘍止血ガイドライン……今枝博之ほか
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Ⅳ.十二指腸・小腸
 ●十二指腸癌診療ガイドライン……布袋屋 修
 ●①小腸内視鏡診療ガイドライン,②クローン病小腸狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術ガイドライン……矢野智則ほか
Ⅴ.大腸
 ●①大腸癌治療ガイドライン,②大腸ESD/EMRガイドライン,③大腸cold polypectomyガイドライン……樫田博史
 ●大腸ポリープ診療ガイドライン……松田尚久ほか
 ●大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン……平井悠一郎ほか
 ●大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン……貝瀬 満
Ⅵ.消化器全般におよぶもの
 ●機能性消化管疾患診療ガイドライン
 a.機能性ディスペプシア,b.過敏性腸症候群……三輪洋人
 ●ポリポーシスに関するガイドライン
  ●遺伝性大腸癌診療ガイドライン……藤澤文絵ほか
  ●①小児・成人のためのPeutz-Jeghers症候群診療ガイドライン,②小児・成人のための若年性ポリポーシス症候群診療ガイドライン,③小児・成人のためのCowden症候群/PTEN過誤腫症候群診療ガイドライン……梅野淳嗣ほか
 ●幼児・成人好酸球性消化管疾患診療ガイドライン……鳥谷洋右ほか
 ●①炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020,②潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針……横山 薫
 ●GIST診療ガイドライン……阿部展次ほか
 ●膵・消化管神経内分泌腫瘍(NEN)診療ガイドライン2019年(第2版)……関口正宇
【Note】門脈圧亢進症の診療ガイド2022……日高 央ほか
 ●門脈血行異常症ガイドライン……古市好宏ほか
Ⅶ.胆膵
 ●膵癌診療ガイドライン……山下泰伸ほか
 ●IPMN国際診療ガイドライン……山﨑友裕ほか
 ●急性膵炎診療ガイドライン……中坪良輔ほか
 ●慢性膵炎診療ガイドライン……山宮 知ほか
 ●①自己免疫性膵炎診療ガイドライン,②IgG4関連硬化性胆管炎診療ガイドライン……神澤輝実
 ●①エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン,②超音波内視鏡下胆道ドレナージの安全施行への診療ガイドライン……石井重登ほか
 ●急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン2018……小嶋啓之ほか
【Note】原発性硬化性胆管炎の診療指針……水野 卓ほか
 ●①胆石症診療ガイドライン,②高齢者胆石診療ガイドライン……林 伸彦ほか
 ●内視鏡的乳頭切除術(endoscopic papillectomy:EP)診療ガイドライン……良沢昭銘

 

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