コンベックス型超音波内視鏡(EUS)トレーニング法 ・描出のコツ:記事一覧
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EUSスクリーニングスキル: chasing method
様々なEUSの教科書にCTと臓器の位置関係などがかかれております。皆様それをみてEUSを勉強されていると思いますが、コンベックスEUSを上達するのに最も重要なことは、プローブと臓器との位置関係ではありません。なぜなら、実際にスコープを握っているときに2次元の臓器との対比画像が一枚あっても、実際には臓器は3次元的に広がっているためあまり役にたたない事が多いです。さらに、人により臓器の形、胃や十二指腸の広さなどが様々であるためなかなか教科書の画像とは一致しないことが多いです。
ですから私達は、
プローブで見えた管腔や臓器をEUS画面の6時にキープして追いかけるという方法(CHASING METHOD)を指導しています。CHASING METHODは、そこにある管腔を6時にキープして丁寧に追いかけ、次にみえた管腔に乗り換える方法です。
コンベックスEUSができるようになるまでどのくらいかかるのか?
コンベックスEUSの、CHASING METHODによるスクリーニングを一通りできるようになる期間はどのくらいでしようか?20カットのスコアリングでラーニングカーブでフルスコアまでの時間を評価してみましたところ、約2-3ヶ月合計20-30例の検査をすれば20カットスコアにおいてフルスコアが出現し始めます。このことからもCHASING METHODによる教育は有用である可能性があります。
コンベックスEUS: CHASING METHODの習得に必要なスキルとは?
検査中に、トレイナーに指導すべき事は以下の3個のみです。
①6時キープ
目的とする管腔(脈管)を6時にキープする事
②適切な圧着
適切なプローブの圧着で空気のアーチファクトを減らし、また管腔を潰さないようにする事
③ゆっくり動かす
①②が維持できるような速度でスコープをゆっくり動かす事。
これらを意識するだけで格段にEUSの上達速度が上がります。
①6時キープ
これは、6時に精密であればあるほどいいです。その理由は、操作が押し引き中心であるラジアルと異なり、コンベックスEUSの描出は左右の回転が中心でであるため、6時方向に描出される対象を回転の中心として回ります。ですから、回転の軸をしっかりと決める必要があり、回転の中心にフォローしたい管腔を持ってくる事が重要です。回転軸を決めていなければスコープを回転した時にフォローしたい管腔を容易に見失ってしまうのは当然ですね。
例えば胃内操作 膵臓の描出の場合、
肝臓から門脈を描出し、門脈を6時にキープしてスコープを進めるとかならずMPDと交差します。MPDと交差したら、次はMPDを6時にキープし、右回転で膵体尾部方向へ進みます。特に膵体尾部では膵臓を輪切りにしているように見えますので回転軸を膵管にするために、しっかり6時に膵管をキープする必要があります。
6時キープのコツ
膵体部から尾部へ行く場合右回転すると膵管が画面の右側へ行きます。そうすると、膵管を6時にキープする為にカメラを引く必要があります。つまり右回転、引く、右回転、引く、右回転、引くというように、交互に回転操作と引くことを繰り返します。
慣れてくれば同時にできるようになりますが尾部に行く場合は、さらにアップアングルも加わってきますので少し大変です。
右回転、引く、アップ、右回転、引く、アップ、右回転、引く、アップという、感じですね。
ひとことで言うと、6時キープ、圧着が出来てなければ回さない。6時であること、圧着がきちんとできて初めてスコープを回転させるように心掛ければ、フォローしたい管腔は100%見落としません。
②適切な圧着
次は圧着ですが、圧着の主な目的は空気を無くして視野を確保し病変を見つけること、目的とする病変や脈管にできる限り近づききれいに観察する(ピントを合わせる)ことです。
空気を無くすためのアップアングル
あなたのアップアングルで膵臓や肝臓がひしゃげていないでしょうか?追いかけたい膵管や胆管が細い時、アップが強すぎるとすぐに潰れて見失ってしまいます。しかし、圧着が弱すぎるとすぐにプローブと、走査している腸管壁との間に頻繁に空気が入ってしまい見落としの原因となります。そのため、管腔を見失わずにきれいに追うためには、観察したい管腔や臓器が潰れないぎりぎりの力でアップをかけて臓器をフォローしていく必要があります。
もちろん、空気を無くすためには、①吸引ボタンを押す②脱気水をまく③先端バルーンを膨らませるといった方法があります。吸引は重要ですが吸引のみに頼りすぎると粘膜が吸いだこでいっぱいになりブサイクですし、脱気水をまくこともやや煩雑です。バルーンはコストも掛かりますし、施設によっては採用されていないこともあります。
この微細な操作を極めていかないと硬い腫瘍があり、すぐにこりっと視野が滑ってしまう時や、ただでさえ見失いやすいような胆管・膵管が拡張していない症例、高エコーの脂肪膵症例、慢性膵炎症例には対応できないです。
圧着のトレーニング方法は、EUSを実施している時に下記のことを意識することです。
圧着で意識すべきことは空気が入らないようにアップをかけた状態で、臓器または管腔が変形しないように、きれいに見えるように形状を常に意識すること。臓器や脈管がつぶれていたら美しく見える形までダウンをすることです。
ピントを合わすためのアップアングル 胃内操作:頭部と尾部
管腔が遠ざかった時にアップアングルをかけることは重要です。この時は膵管はエコー画面で垂直方向に落ちていくためしっかりアップをかけても管腔はあまり変形しません。特に必要なのは、胃内では頭部の膵管を追いかける時や尾部を見る時で、球部は膵体部で膵管をおいかける時です。しっかりアップをかけて管腔を追えるだけ追いましょう。通常胃内は壁が厚いため問題ないですが、球部操作に関しては穿孔には注意してアップをかけてください。
球部では特に意識的なダウンアングルが重要
球部は肝門部方向を見ようとすると自然にその操作で胆管が潰れてしまいます。意識的なダウンが必要で、そのことを知っていないとなかなか難しいことがあります。球部ではしっかりダウンアングルしても多少消化管のひだが介在するために、すぐに空気は入ってきません。空気が入らないギリギリのダウンアングルをすることが肝門部観察などで重要となることがあります。
スコープpushによる圧着と吸引のコツ:吸引孔の位置を意識する。
エコー画面上の吸引孔の場所の意識も重要で、画面の右側になります。プローブが腸管に密着している状況では↓のピンクの範囲しか空気を吸引することはできません。もちろん事前に空気をすべて吸うことができればベストですが、それでも残存する場合もあります。特に、エコー画面の左半分に貯留した空気はスコープをやさしく圧着することで消すことができます。特に球部操作など狭い管腔における操作でこの意識が大切になってきます。
③ゆっくりスコープを動かす
これは①と②が維持できる速度でカメラを動かすということですが、6時キープができていないうちは6時キープができるところまでスコープを動かす速度を抑えましょう。
まとめ
CHASING METHODはEUSで描出できた管腔を連続して描出し、乗り換える方法です。その技術の習得に必要な要素は①6時キープ②適切な圧着③ゆっくり動かすことの3点のみです。
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